■伝票には本名をサイン! 抜け出せないホスト沼
20代の女性にとって10万円といえば大金だ。なぜ、彼女はそんな街へと足を運ぶことになったのか。
「通い始めた当時は、まだ大学3年生でした。コロナ禍での入学ということもあり大学はリモート授業。サークル活動もありませんでしたし、同級生との出会いもままならない。
韓流アイドルが趣味で追っかけをしていましたが、渡韓の機会もコロナで制限されている。そんな時に高校時代の友達に“Tのタイプの人がいるから”と誘われて歌舞伎町へと出かけたんです」(前出のTさん)
出会ったのは有名漫画の登場人物と同じ名前をした人気ホストX。現在でも“売上1億円プレイヤー”の肩書きを引っ提げて歌舞伎町で活動している。
「この人に会いたいと思ってお店に行ったので初回から指名料が発生しました。お会計は8万円くらいでしたね。入店時に顔つきの身分証明証のコピーをとられましたが、お酒を出す場ですし、18歳未満の入店を防ぎたいのかなくらいで深くは考えていませんでした」(前同)
初めてお店に足を踏み入れて2か月も経つ21年の5月になると、週に2回は歌舞伎町で過ごすようになった。この頃からホストXのTさんに対する対応にも変化が現れる。
「売掛金と呼ばれる店でのツケ払いが許されるようになったんです。ツケ払いは、お会計が20万円だったら、その日の手持ちの10万円をその場で支払って、残りの10万円を次回来店時に支払う形をとります」(同)
ツケ払いを行なう女の子は、お店で伝票を受け取るとその場で、自身の本名を伝票にサイン。さらには、住所や連絡先も記載する。女の子は店側に自分の身元を把握されるため、売掛金を払わずにお店から抜け出すことができないというカラクリだ。
「ホストクラブは月の終わりか、その1日前が締め日となっていて、それまでの売掛金を翌月の5日までに入金するのが一般的です。客の売掛金が漏れると、ホストが自腹でその分を支払わないといけない。ホストとしても売掛金は、客との間に信頼関係がないと導入しにくいのです」(同)
売掛金制度がTさんに導入されて2か月後となる7月の締め日には、指名しているホストXから1本のLINEが送られてきた。
「“なにもできないよ”とは伝えていたんですが、呼ばれたからお店に行ってしまって。すると、“どうしてもお願いだから”と、シャンパンボトルを入れるように頼まれたんです」(同)
Tさんが「無理だよ」と断ると、ホストの態度は急変。隣に座っているのにずっとスマホを見て無表情になったという。