■奨学金にも手を付けて……
ホストXがその日Tさんに見せた表情は、それまで2人で過ごしている時には見たこともないものだった。「このままではホストとの関係が切れてしまう」。そう考えたTさんはシャンパンボトルを注文。店を出る頃に手元へと届いた伝票に記載されていた数字は、69万9000円だった。入金日となるのは8月5日。Tさんはどのようにしてお金を作ったのか。
「風俗です。当時はJKリフレと呼ばれる派遣型の風俗店に勤務していたのですが、本番行為を1回3万円ですれば1日10万円は稼げました。なので、50万円ほど自分で稼ぎ、足りない分は奨学金の口座からお金を出しましたね」
最初の頃は伝票に記載される額も1回15万円ほどだったが、このころから徐々にヒートアップ。店に出向けば、1回40万円や50万円の伝票が手渡され、月にお店で200万円を使うのも珍しいことではなくなった。Tさんが歌舞伎町通いをやめられなかった理由を語る。
「Xのことが、好きという気持ちが大きかったんだと思います。嫌われたくないとかそういう思いが先行してしまって。今まで彼氏ができたこともないので、余計熱が入ってしまったのかもしれません」
ホスト側もお客さんを手放さないために、あの手この手を店内では使ってくるという。
「ボトルを1本入れればお店のホストの顔が描かれたシールを1枚引ける、というガチャポンのような企画もありました。エンターテインメントですよね。自分が指名しているホストのシールが欲しければ、1本最低10万円はするシャンパンボトルを入れ続け、ボトルガチャにチャレンジし、シールを引かないといけない。
シャンパンボトルを何本も入れ、月に200万も使えば旅行やホテルに行こうといった提案も指名しているホストからある。お店から抜けられないんです」(前同)
一連のホストクラブの状況を問題視するのは、ホストクラブ問題に取り組む唐澤貴洋弁護士だ。
「人の恋愛感情を利用して、売掛金という形で実質、多額の借金を女性客に背負わせる。その結果、女性客が風俗店で勤務をしたり、売春行為に手を染めるのは不健全だと思います。また、ホストクラブの仕組みは実質的に貸金業だとも捉えられます。
現金がない女性客にお金がないのにお酒を飲ませて、指名しているホストを連帯保証人にする。それを無許可で行なっているのは、貸金業法に違反していると指摘できるかと思います」
現在、ホストクラブ通いをやめたTさんは唐澤弁護士に被害内容を相談中だ。
「消費者契約法では恋愛感情を利用した上での、契約は取り消せると記載されています。ホストクラブでは、女性の恋愛感情に付け込んだうえで多額の売掛金を課しているので、契約取消を申し入れられる可能性は高いと考えます」(前同)
法の網をかいくぐり、店舗運営を続けてきたホストクラブには、終幕の時が近づいているのかもしれない。