■空豆と音の未来にわずかな光が見えた

 空豆は結婚することで、故郷へ帰らず東京に残る道を模索していた。婚約者にフラれて結婚が破談になってからは、婚活パーティーに参加したり、爽介(川上洋平(Alexzndros/40)と結婚を前提にしたデートをしてみたりと、右往左往している。

 誰かと結婚して、実家にエレベーターを設置する300万円を工面してくれる相手を探しているだけで、誰かを好きになることや幸せになることが目的ではないから、何事も中途半端になる。爽介のほうも、空豆と結婚する理由が別れ話がこじれている彼女に見せつけて諦めてもらうため、という浅い考えで結婚を考えていた。

 お互い都合のいい結婚ではあったけれど、やはりというべきか頓挫してしまう。空豆は、自分が成功することで祖母にエレベーターをプレゼントしたり、恩返しをしようと思えば、こんなふうにはならなかったはず。むなしい気持ちでいっぱいだった空豆に、音がCMのコンペで採用された曲は空豆に助けてもらったものだと伝えるのがすてきだ。空豆の心が空洞になったときは、音がスッと入ってきて助けてくれる。

 そして音にとっても、空豆は自分の音楽を支持して喜んでくれる大切な存在だ。まだ恋の気配は見えないけれど、お互いの隙間を埋め合える2人が、これからどう変化していくのか見守りたい。(文・青石 爽)