■コンビニが高級恵方巻に「肉」を使うワケ
流通ジャーナリストでコンビニ評論家の渡辺広明氏は、コンビニ各社がこうした名店とコラボした高級恵方巻をラインナップする背景として、「そもそも2月は営業日数が少ない」ことに加え、「年が明けたばかりで、売上アップを見込めるイベントがない」ことを指摘する。
「コンビニでは、年賀状やお中元・お歳暮など、季節行事の商品を予約受付するというビジネスモデルがあるんですね。立地に関係なく売上を上げられる予約商売は、手堅く抑えたいポイントなんです。
それなのに2月は何もない。そこで恵方巻が注目されました。さらに、ここ数年は廃棄問題が取り沙汰されるので、ますます予約中心になっています。恵方巻はコンビニビジネスにピッタリなのです」(前同)
また、有名な高級店とコラボする理由のひとつには、恵方巻の単価が低い事情もあるという。
「予約獲得の手間を考えると、当然、高価格帯のもののほうが利益が出ます。その際、名店とコラボすると、ネームバリューもブランド力も“借り”られる。お客さん側も進化していて、味に高い付加価値を求めるようになっています。普段、なかなか食べられない店が監修したとなれば、関心をそそられるというわけです」(同)
高級路線のコラボ恵方巻には、コンビニ3社とも海鮮だけでなく肉の名店も起用しているが、
「高齢者世代は、“太巻きに肉?”と思うかもしれませんが、若い世代にとって、寿司と肉の組み合わせは当たり前。回転寿司にもありますし、韓国の海苔巻きであるキンパなんかも人気です。また海鮮よりも、肉のほうが味の違いがわかりやすい。また、コンビニ側には、牛肉を具材として使用すると、商品の価値を上げやすいという側面があります」(同)
確かに、銀座久兵衛で3万円の寿司を食べることは難しいが、1300円の恵方巻なら頑張れば、食べられないこともないだろう。2月3日、あなたは食べますか?
渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
1967年生まれ、浜松市出身。 東洋大学法学部経営法学科卒業。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長・スーパーバイザーを経て約16年間バイヤーを経験。日用品を中心に、さまざまなメーカーと約780品目の商品開発に携わる。
顧問、講演、メディア出演など幅広い活動を行っており、現在フジテレビ『LiveNews α』レギュラーコメンテーター。Tokyofm 『馬渕・渡辺の#ビジトピ』パーソナリティ、YouTube 『やらまいかビジニュース』。著書に『コンビニが日本から消えたなら』(ベストセラーズ)、『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版、馬渕磨理子との共著)等。