■保守的なアイス業界が抹茶味を出す「意味」
まず、前出の荒井氏は「アイス業界はスイーツのなかで一番保守的で、トレンドの最後の砦」だという。どういうことか。
「アイスクリーム類は、賞味期限を書かなくてもいい商品なんです。-18℃以下の保存環境であれば品質の変化がほとんどないので、消費者庁・食品表示基準の規定により、賞味期限の表示を省略することが認められています。
そのため理屈上は棚に延々と置いておくことが可能ですが、そうすると次の新しい商品が入れられないので、必ず売れる商品を作らないといけない。マーケティングはかなり慎重に行います。そういうアイス業界で抹茶味が人気ということは、そのフレーバーが本当に裾野の広い需要があるということです」(荒井氏)
さらに、近年の抹茶アイスの進化について、荒井さんは3つのポイントを挙げる。まずひとつめは、“抹茶”をフレーバーとして取り入れる視点が醸成されてきたこと。2つめは、包材の改良だ。
「昔は、抹茶フレーバーといえば“苦み”や“渋み”が先行してしまっていました。でも、本来抹茶は旨みや深みもある。今は茶葉の選定にこだわったうえで、アイスとしての甘さを引き立てながら、苦みや旨みを立体的に調えることに成功しています。
また、抹茶商品はアイスに限らず、光に当たると変色したり味に雑味が出てしまいます。そのため、遮光性のある包材が重要になってくる。その品質も見直され、味の劣化が抑えられるようになりました」(前同)