■8個入り100円だった大阪、420円で登場した銀だこ

 大阪の伝統的なたこ焼きとは異なる調理法や技術革新を背景に、調理時間短縮に成功した『銀だこ』。では、価格面についてはどうか。通常時、『銀だこ』ではスタンダードなソース味の8個入りが580円。97年の創業当時は420円だった。この価格は大阪人にとって高いのか安いのか。

「大阪では、昔やったら8個で100円という時代もあったけど、今はどんどん値上がっている。前は価格差を感じやすかったかもしれませんけど、今ではむしろ銀だこさんは安いぐらい」(前出の熊谷さん)

 背景にあるのが、世界的なたこ焼き人気だ。

「小麦粉の価格高騰がニュースになるけど、たこ焼きに限っていえば、影響が大きいのはたこの価格高騰。たこ焼きの生地に使う小麦粉の値段なんてしれてます。原価の7割がたこというお店もあるくらいです。

 たこって今、世界的に注目されているんですよね。ニューヨークで人気のラーメン店のサイドメニューにたこ焼きがあるほどで、需要は右肩上がり。大阪の観光地でもたこ焼きは外国人に絶大な人気です」(前同)

 熊谷さんは、「“安くてウマい”はいつまでも通用せん」とも指摘する。

「あんだけ手間ヒマかけて、いつまでも“昔の屋台”価格でいるのは時代に合いません! 大阪を代表する食文化を提供していると考えれば、適正な価格がいくらか考えなおさなあかんタイミングやないでしょうか。“たこ焼きごときにそんなに高い価格設定できん”という店主もいはりますけど、結局経営がしんどいと、自分の首をしめることになって、後継ぎも離れていく。

 昔はたこ焼き屋でも…という軽い気持ちでよかったでしょうけど、これからは、食都大阪の食文化を背負って立つ、そんな強い意気込みで焼いてもらわんとあかん時期に来てると思います。そして大阪の人は、値打ちがあるものにはお金を払ってくれる人たちやと思ってます」(同)