日本では当たり前のように街のそこかしこで見かける自動販売機。現代を生きる我々にとって、小銭を入れれば商品が受け取り口から出てくる自販機の存在は、すでに日常風景だ。しかし、自販機の製造、販売などを行なう企業を取りまとめる一般社団法人日本自動販売システム機械工業会によれば、自動販売機及び自動サービス機(両替機や自動精算機など)の普及台数は減少の一途を辿っているという。

 業界事情に詳しいジャーナリストが語る。

「2016年におよそ494万台もの自販機が街中にはありました。それが、22年には400万台を割り396万台にまで減少。自販機の設置台数は人口比率では世界一で、日本は自販機大国であったはずなのですが……」

 こうした流れを受け業界も奮起。近年では、消費電力量を減らした省エネタイプの開発を筆頭に、コロナ渦に合わせ自販機のタッチレス化など、業界は自販機の進化によって現状を打破せんとしている。自販機の技術面の進化へと脚光が集まる中、注目を集めているのはこれまでの自販機ではあまり取り扱ってこなかったものを売る、新種の自販機の存在だという。

 若者文化や流行の最先端に詳しいトレンドアナリストの太田まき子氏が解説する。

「21年には全国に190店舗ほどのフラワーショップを展開する日比谷花壇が、期間限定で『おはなの自動販売機』を小田急新宿駅西口地下イベントスペースなどに設置。20時以降の利用者が全体の3割を占めるなど、自販機ならではのメリットがうまく機能して話題となり、他が追随する例も出ました。

 翌22年には大正製薬がJR新宿駅改札内に『クスリの販売機』を設置。こちらも約3か月間の実証実験としての設置でしたが、薬を自販機で売るというのは国内初の事例で、注目を集めましたね」(太田氏)

※画像は『日比谷花壇』の公式X『hibiyakadan』より

 今年1月にも「パンの自販機」が話題となったばかり。

「フードロス削減のため、横浜市が24年1月18日より、賞味期限内でありながら廃棄される予定のパンを販売するロッカー型自販機を横浜市営地下鉄の関内駅地下1階に設置。通常より3割ほど安いということで、連日完売するほどの人気を呼んでいます」(前同)

フードロス削減⾃販機は関内駅地下1階の事務室よこにある『SDGsステーション横浜関内』内に設置  撮影/編集部

 ロッカー型自販機のボックスは全部で18個。パンは横浜市中区のパン屋『緑道パン』が提供しており、製造から48時間以内の食パンや総菜パン、菓子パンなど数個ずつを詰め合わせて売られている。値段は300円、500円、600円、1000円(税込み・以下同)の4種類だ。

「私が買った500円のセットはイングリッシュマフィン、明太フランス、こしあんクルミバーの3つが入っていましたから、めちゃくちゃお得ですよね。ロッカーの中には『緑道パン』の袋が一緒に入っているので持ち帰りやすいですし、賞味期限は翌日なので慌てて食べる必要もありません。もちもちの手作りパンなので、もちろん味もバッチリです」(同)

『緑道パン』の手作りパンの詰め合わせが購入できる  撮影/編集部