東京・世田谷区。押しも押されもせぬ昭和の銀幕スター・石原裕次郎の自宅がある成城エリアを筆頭に、高級住宅地が多い地域として知られる。中でも2011年頃から本格的に再開発が進み、駅直結の大型複合施設などが建設されて人気を博しているのは二子玉川だ。渋谷から出ている田園都市線沿いにあるそんな洗練された街が、思わぬ形でネット上で注目を集めたのは、今年2月のことである。
事情に詳しいウェブニュース編集者が話す。
「駅直結の複合施設・二子玉川ライズの脇にある喫煙所に掲出された1枚の張り紙が、X(旧ツイッター)上で話題になったんです。文面に記されていたのは、”こちらは世田谷区の公共喫煙所です。楽天グループ専用ではありません。”との文言。
この文面は、楽天グループ株式会社と、その本社がある二子玉川ライズ施設管理者が連名で作成しており、楽天従業員にピンポイントで注意を呼びかけているようにも読めることから、Xユーザーからは《名指しだな》《社内に喫煙所作れよw》といったツッコミが続出したんです」
公共の場に、こうした張り紙が掲示されるに至るまで、どういった経緯があったのか――。
張り紙で名指しされた三木谷浩史氏(59)率いる楽天グループが、それまで本社を構えていた東品川から二子玉川へと移転してきたのは、15年8月のこと。複数のオフィス棟が立ち並ぶ二子玉川ライズの中で楽天本社が入るのは二子玉ライズの敷地内にある地上30階建てのビル、二子玉川ライズ・タワーオフィス部分(通称・楽天クリムゾンハウス)だ。
近隣に住んで15年、二子玉川ライズをよく利用するという30代の女性会社員が、当時の衝撃を振り返る。
「二子玉川ライズは二子玉川駅エリアの再開発でつくられた複合施設で、商業施設、オフィス、ホテル、映画館などがあります。
11年にショッピングセンターが開業し、その4年後に楽天が移ってきました。それまでは、田園都市線のニコタマ(二子玉川の通称)の駅近くにある買い物スポットは高島屋ぐらいで、おしゃれな子連れママやお金持ちマダムがいる落ち着いた街といった印象でした。
再開発でトレンド感あるお店が一気に増え、さらに楽天が移ってくると聞いたときは“ニコタマに!?”とビックリしたものです。IT企業って、イケイケみたいなイメージがあるじゃないですか。ニコタマは真逆の落ち着いた街だったので……。でも、楽天で働く人がニコタマを利用するようになって、活気ある雰囲気に変わりましたね」