■三淵さんを映し出す「寅子」の姿
人気テレビ番組にレギュラー出演し、弁護士志望者にとって憧れの存在ともなった前出の住田弁護士。その住田弁護士は三淵さんのことを、「法曹界で自然体に振舞うまでには多数の事件を経験され、苦い想いなども経ていたからこそ。自信の根源もそこにあったのでしょうね」と推察する。そして、その後、女性法律家協会の会長になった三淵さんのことを、「女性法律家の憧れの存在として駆け抜けられました」と敬愛するのだ。
住田弁護士が三淵さんと過ごしたのは、10日程度の家裁修習の期間のみ。それでも住田弁護士に強いインパクトを残した三淵さん。女は男まさりでないと”男社会”を生き抜けないというのは“刷り込み”でしかないと思わせる自然体の姿は強く印象に残ったようだ。その姿は、ドラマ『虎に翼』の寅子そのものと言ってもいいのかもしれない。
寅子の姿が目新しく映るとしたら、制作者にも視聴者にも”朝ドラのヒロインはこういうもの”という”刷り込み“があったからではないだろうか。そんな刷り込みは、寅子に言わせれば”はて?”そのものだろう。
ドラマでは、弁護士となるための試験を女性が受けることがようやく認められたばかりだが、寅子が今後、どんな”はて?”を示していくのか、注目したい。
吉田潮
コラムニスト。週刊新潮、東京新聞、NHKドキュメント72時間(読む&聴く)、プレジデントオンライン、小学館kufura、ステラnetなどで連載・寄稿。著書に「ふがいないきょうだいに困ってる」(光文社)など。
住田裕子
弁護士。兵庫県加古川市出身。東京大学法学部卒業。昭和54年東京地検検事任官。『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)などの人気番組で活躍。