■訪日外国人に足元を見られる「性善説」の日本

 免税制度を悪用した商品転売を行なうことを防ぐための「リファンド方式」。前出の酒井教授はこの「リファンド方式」の導入に賛成の立場だ。なぜ日本ではこれまで「リファンド方式」を適用してこなかったのだろうか。

「リファンド方式だと、行政側としても出国客の免税品の申請をチェックしたり、還付金を渡す手間がかかります。旅行者からしたら当然、最初から免税のほうがありがたい。日本は現在、観光立国をうたってインバウンド需要を取り込もうというスタンスなので、旅行者のメリットを考えると、現在の制度は理にはかなってる。

 とはいえ、海外からも転売ヤーが押し寄せ、免税制度を悪用しているのを見るに、現在の制度はあくまでも“性善説”を前提としているのは明らか。それが通用しない以上、訪日外国人が日本国内で購入した商品を転売する問題がなくなることはないでしょう」(酒井教授)

 酒井教授は「外国人からしたら、今の日本はタックスヘイブン(租税回避地)で簡単に転売で稼げる国という噂が界隈に広まってしまっている」と指摘する。

「もちろん政府も、訪日外国人向けの免税制度を悪用した転売を手をこまねいて見ているわけではありません。23年末には、現在の免税制度をリファンド方式へと本格的に見直しを図る方針が決まりました。

 ただし制度の詳細は25年度に決められるとのこと。施行時期はまだ不明なので、制度の導入にはまだまだ時間がかかりそうです。システムを途中から切り替えるのは大変なんですよね」(前同)

 その間に、“国際転売ヤー”たちは荒稼ぎするのだろう。

酒井克彦
1963年2月東京都生まれ。中央大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)。中央大学商学部教授を経て、中央大学法科大学院教授。現在、租税法などを担当。