■区民は『月曜から夜ふかし』に怒っている

 なかなか上昇の兆しを見せない区外在住者の足立区への評価。その一方で、区内在住者が抱く足立区へのイメージには大きな変化が起きている。

 シティプロモーション課が設置された翌年である11年度に行なわれた区民に対する意識調査では半数近くが“治安が悪い”と答えていたのが、今では数字が逆転。23年度の調査では59.5%もの区内在住者が“足立区は治安が良い”と答えるようになったのだ。背景にはどのような事情があるのだろうか。

「刑法犯罪認知件数を下げるために様々な努力を重ねました。01年度には16843件もあった区内の犯罪認知件数ですが、23年度には4222件と75%減。特に力を入れたのが自転車の窃盗被害です」(前出の足立区シティプロモーション課の栗木さん)

 足立区で起きる事件のおよそ3割が自転車の窃盗とのこと。身近で起こる事件が多いとなると区民も地域の治安に不安を抱きやすい。そのため区としても少しでも犯罪を減らそうと、区民を対象に自転車への鍵かけを呼び掛ける“自転車鍵かけ運動”を行なったり、区内の高校生を対象に自転車の鍵をかけたらマクドナルドのクーポンを配布するなどあの手、この手の施策を打ち出し、自転車の窃盗件数を減らそうとしてきたという。

「足立区は“治安が悪い”と言われていますが、2時間サスペンスで描かれるような凶悪事件が多いわけではないんです。そこで18年1月1日からは自転車の鍵かけを条例で義務化しました」(前同)

 条例制定の甲斐もあって犯罪件数の減少へとつながったというわけだ。犯罪認知件数がまさに激減し、グングンと改善された足立区の治安。それでもなお、低空飛行を続ける区外の住民による足立区への評価。その原因はどこにあると、栗木さんは捉えているのか。

「メディアの影響は大きいと思います。住民が口を揃えて不満を述べるのが『月曜から夜ふかし』です。足立区は区の面積が広いこともあり緑も豊か。区内の駅周辺も再開発が進み、高架下にはオシャレな飲食店も出店しています。

 それなのに番組内で取り上げられるのは“朝からカップ酒を啜っているおじさん”とか、“かつてのステレオタイプの足立区民”ばかり。住民からも“いい加減にして欲しい”“不快だ”と不満の声が上がっていますよ」(同)

 住民からもブーイングが飛び出た『月曜から夜ふかし』による足立区イジり。テレビ業界からも苦言が飛び出している。

「インターネットテレビ局であるABEMAのニュース番組『ABEMA Prime』の6月6日放送回に出演した、お笑いコンビ・EXITりんたろー。さん(38)が、足立区の取り組みについての特集の際に、“『月曜から夜ふかし』で出てくる酔っぱらいの人ってオンエア禁止したらどうですか? (酔っぱらいは)どこにでもいるもの”と番組内で苦言を呈していましたね」(前出のワイドショー関係者)

 人気お笑い芸人も疑問の声を上げる『夜ふかし』の放送内容なのだが、イメージアップを目指し、区としても対抗策を打ち出している。

「悪いイメージを抱いている人が多いならそれを逆手に取ってやろうと思い、『ワケあり区、足立区。』というキャッチコピーを打ち出しました。多くの人が期待するようなワケありな足立区というのを自ら打ち出し、足立区の良い部分をアピールするという戦略です」(同)

 足立区では現在、世帯年収800万円までの家庭を目安に大学への進学費用や授業料の一部を区が負担する給付型奨学金制度を充実させるなど子育て支援策にも力を入れる。また、区内には東京藝術大学など6大学が揃い、子育てがしやすい文教エリアでもあるというのだ。

 マツコさん、村上さん、ここは1つ、住むと良いワケありな足立区の姿を『夜ふかし』で取り上げるのはいかがでしょうか。