■『舞いあがれ!』の貴司役で得た「ワイルドフェロモン」
赤楚が『ビルド』で演じた万丈は、好青年だが「バカ」呼ばわりされると「せめて筋肉を付けろよ」と言い出したり、過去を語れと言われて生い立ちから話そうとしたりする“おバカキャラ”だったのだ。
口調も全体的に「何やってんだよ!」とか「今の俺は、負ける気がしねぇ!」と、典型的な熱血漢のキャラ。茶髪やスカジャン、叫ぶ演技なども非常に似合っており、赤楚はヤンキー系のキャラで売れるだろう、と当時は思われていた。
しかし、『ビルド』終了後に演じる役の多くは温厚で繊細な好青年。もちろん、役ごとに絶妙に演じ分けているが、すべてに共通する朗らかな笑顔から“癒し系男子”として人気を博したのだ。
1度ハマり役を得ると逆にその役から抜け出すのに苦労するものだが、赤楚の場合は“赤楚=万丈”というイメージに固定させないだけの演技力、表現力があった。それが後の多くの仕事につながった、ということだろう。“強烈な役で注目を集め、その後いろいろな作品でバリエーションを見せる”という黄金パターンが見事にハマったと言える。
そんな赤楚人気は『チェリまほ』以降も留まることを知らず、『オリコン』が発表した『2022年ブレイク俳優ランキング(男性編)』で上半期9位だったのが下半期では4位に急上昇。
今年に入ってからも『舞いあがれ!』にくわえて、4月からは『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(TBS系、金曜日22時~)の準主役、主演映画『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』(Netflix)が控えており、役者業は絶好調だ。
そんな赤楚は、『舞いあがれ!』でさらなる“進化”を見せてくれた。赤楚が演じる貴司の職業は歌人。高校卒業後、システムエンジニアとして就職するが、“普通”の日々に疑問を感じ、退職し、短歌を詠む歌人を目指していくことになる。真面目な優等生から人生をじっくりと見つめ、自分に正直に生きていく男への変貌。
そしてその過程にあったルックスの変化。無精ひげをたくわえて憂いある表情を見せる貴司に、多くの女性視聴者は“ほとばしる色気”を感じたようだ。
現在、『仮面ライダー』出身の俳優では佐藤、菅田、吉沢が特に爆発的な売れっ子俳優へと成長して事実上の“トップ3”のような立ち位置にある。これまでの魅力にくわえ、ワイルドなフェロモンという武器も手にした赤楚なら、佐藤、菅田、吉沢のトップ3をも凌駕する存在になるのかもしれない――。
(特撮ライター・トシ)