世界を席巻するアジアのスターグループ・BTSのメンバーや、旧ジャニーズの人気アイドルグループで活躍していた元メンバーも、自身の体に入ったタトゥーを堂々と披露する時代になった。もはや海外では普通のことで、日本でも気軽に“新作”を入れ、会うたびにタトゥーが増えている若者もいる。かつてと比べるとタトゥーへの印象は激変したと言えるだろうが、そこには大きな問題も……。

 形成外科・美容医療の専門医として10年以上、臨床と研究に従事、2019年に開業し、現在は東京・恵比寿こもれびクリニックの院長として勤務する西嶌暁生(にしじまあきお)氏。「人はそれぞれに合った健康や美しさがある」をモットーとし、日々“飾らない美”ナチュラルビューティーをサポートしているという西嶌医師が、タトゥーを入れるハードルが下がる今だからこそ知ってほしいと語る。

【#1】で話してくれた「原則、MRI検査が受けられなくなる」ことに加えて、西嶌医師のもとにも舞い込むタトゥー除去依頼。その具体的な方法と実態とは――。(#、2のうち2)

西嶌暁生医師  ※提供画像

■基本、タトゥーを除去する方法は5つ

 基本的に、タトゥーを除去する方法は5つある。

 1つ目は、医療色素レーザーを用いる方法。色素の「色」や「粒子」にレーザー光線を反応させるものとしては、最新ではPICO(ピコ)レーザーが使用されることが多い。PICO以外には、Qスイッチヤグ、アレキサンドライト、ルビーレーザーが使用されることもある。

 PICOレーザーは従来のレーザーのように「光熱作用」によって色素を除去するだけではなく、「光音響効果」によって色素の「粒子」を破砕して、マクロファージに食べさせることで、色素を薄くする作用がある。

 ただし、このPICOレーザーは1台1000万円を遥かに超える価格だ。最近は円安の関係でさらに高騰している。保険診療だけでなく、自費診療においても、少しでも治療効果を上げるためにPICOレーザーを導入するクリニックも多い。ただし、自費診療の場合、その施術費用は高めになる。例えば、当院の場合は、タトゥー40㎟あたり33000円(税込)で設定している。

 もちろん、タトゥーが広範囲に及ぶ場合は、その都度、患者と相談して継続可能な落としどころを模索する。というのも、レーザー治療によるタトゥー除去は、決して1回では終わらないからだ。最低でも5回はかかり、色素もまだらに薄くなるため、綺麗にはならない。当院では未成年者が安易に入れたタトゥーに対して、両親がお金を払って、レーザー除去を行なっている場合もあるが、真皮の奥深くに刻まれた色素はなかなか綺麗にならない。

 2つ目は、炭酸ガスレーザーを使用する方法である。組織の水分に反応して蒸散させ削り取るレーザーである。色素レーザーで消えにくく残ってくる色味に対して行なうことがあり、通常第一選択肢にはしない。色素だけを除去するのではなく、皮膚を削って色素を取り除くため、皮膚に傷ができる。刺青を傷跡に置き換える治療である。複数回かかることも多い。

 3つ目は、手術でタトゥーそのものを除去する方法だ。皮膚に麻酔の注射を行なって、タトゥーそのものを切除する方法である。この治療方法の場合は、外科的に切除するため、切除した範囲に関しては1回で確実に除去できる。ただし、外科的に切除可能な形や大きさが限られている上に、たとえ可能であっても、広範囲の場合は手術が複数回にわたる場合もある。

 なお、当然だが、タトゥーがなくなっても手術の痕は残る。傷跡は最初は線状の傷跡一本であっても数か月かけて多少幅のある傷跡になっていくことが多い。