■審査員によって勝敗が変わるという“理不尽”さ

 上手なダンスを見れば素直に「カッコイイ」「すごい」「美しい」といった感想が視聴者からは漏れ出るもの。しかし、五輪にも出場するレベルのダンサーは全員「すごい」のが当たり前。これまでダンスに触れてこなかった視聴者は、ダンスバトルの見方がわからない、というのが本音ではないだろうか。

 前出のりきっちょさんは、「まさにそのモヤモヤが、ダンスが今まで広くバズりきってこなかったポイントですよね」と言う。

「ダンスバトルの勝敗はもう審査員の“好み”なんです。通常、スポーツでは、点を入れたら勝ちとか転んだらダメ、格闘技なら倒した方が勝ち、といったわかりやすい判定基準がありますが、ダンスは審査員によっても勝敗が変わる理不尽な世界が当たり前。

 つまりバトルで結果を出そうと思えば、審査員の好みに合わせる必要が出てきます。そうすると、自分のダンスだけをしていればいいというわけにはいかなくなる。ダンスって本来自由なカルチャーなはずだったのに、気がついたら審査員に評価してもらうためのダンスになっていて、最初自分がやりたかったこととギャップが生まれるパターンはよくあります」(りきっちょさん)

 りきっちょさんによれば、審査員によって判定が左右されるため、ダンサーにとってジャッジが“フェア”じゃないと感じることもよくある話なのだそうだ。もちろん「この審査員に判定してもらいたい」という挑戦マインドがダンススキルの向上につながる部分もあるが、自分のダンスを貫くがゆえに大会で辛酸をなめると葛藤が生まれる。結果、大会に出場しなくなるダンサーも少なくないという。