■キッズ脱毛が広がる背景

 一昔前であれば1回数十万円と高額な治療費が必要だった医療脱毛。しかし、美容クリニックの活況により、かつてに比べれば大幅に脱毛にかかる費用が安くなったことも、来院者の背中を後押ししているという。

「今はワキであれば1万円以下で処理できます。大手美容クリニックの中には全身脱毛を1回7万円代から提供しているところもあり、来院者も脱毛に手が出しやすくなったということでしょう」(前出の高瀬院長)

 しかし、キッズ脱毛を行ないたい、と病院を訪ねてくるのは小学生から中学生の子ども。まだ、成長期を終えていない子どもが脱毛をすることにリスクやデメリットはないのだろうか。

「第2次成長期が終わるのはだいたい16歳頃。それまでは、脱毛処理をしたとしても再度、体毛が生えてくる可能性があります」(前同)

 と高瀬院長は言い、さらにアンダーヘアの処理には注意が必要だと指摘する。

「毛が生殖器官をウイルスや細菌などからブロックしている。毛をなくせば、その機能の1つが減る。感染症などのリスクが高まる可能性はありますね」(同)

 近年急増するキッズ脱毛は皮膚科医の間でも大きな注目を集めているそうだ。

「キッズ脱毛を行なうお子さんを調査した統計資料の中には、“毛深い”と学校でいじめられたことを理由に挙げる方もいます。小学校高学年や中学生くらいだと視野が狭い分、どうしても他人と自分の体の違いが気になってしまうのでしょう」(同)

 まさに現代のケースと言えそうな長袖の子どもたちとキッズ脱毛。その裏にはさまざまな事情があるようだ。

高瀬聡子
皮膚科医。ウォブクリニック中目黒総院長。東京慈恵会医科大卒業後、同大に皮膚科医として勤務。2007年にウォブクリニックを開設する。専門は皮膚科と美容皮膚科。丁寧でわかりやすいカウンセリングによる美容医療と薄毛治療の人気が特に高く、雑誌、テレビなどでも活躍中。主な著書に『いちばんわかるスキンケアの教科書 健康な肌のための新常識』(講談社)など。