■批評はされたくないという処世術も

 ピッタリ寄り添って一緒にポーズをとったり、グッズを持ったりする行動は、同じ価値観であるという安心感にもつながる。前出の太田氏は「安心感、傷つきたくない、というのは今の若者を表わすキーワード」だと指摘する。

「ベースに“人と同じ”でいたいという心理が若者の間ではあって、ファッションも通販でランキング上位のものなど、量産型を好む人は多いと言われます。一方で“かわいいファッション”や“自分の好きなもの”は褒められたい、誰かに見てもらいたい、という気持ちもある。そういう時に首下だけの写真は都合がいいですよね。

 というのも、自分の顔を知らない人に公開したら、どうしても見る人の意識は顔に向かってしまって、何かと批評されるリスクが出てきますが、顔が見えない相手にはそうした批評もない。顔を出さないことでシンプルに自分が推したいものに注目してもらえるうえ、“その服かわいい!”、“いいね!”など、褒めてもらえるノリだけで盛り上がることができ、自己肯定感が高まります」(前同)

 コロナ禍には“マスク美人”という言葉が流行したが、首下だけの写真もみんな“美人”に思えてくる。顔出しナシで推しやファッションをアピールする“首下界隈”だが、面倒なリスクを回避する処世術であると同時に、一周回って新しい“盛り”の概念になっていたりして。

太田まき子
新潟県出身。大学卒業後、広告会社及びマーケティング会社にて女性向け商材のプロモーション、ファッションカルチャーイベントの企画運営、エンタメ系の広報PRなどを担当。現在はフリーランスのPRとして、トレンドのマーケティングやリサーチを行う。