■『虎に翼』かぶりは楽しいのだが…

 最終盤での大ネタ投入といった感じだったが、《轟さんまで転生しててキャスト被りまくりで、虎に翼と同時進行で見てて、おおっ!ってなってるけど、どちらも面白かった》《「虎に翼」と「新宿夜戦病院」の役者の行ったり来たりの転生がスゴすぎる。偶然なのかな?》など、『虎に翼』との転生ネタで盛り上がる声にかき消された感は否めない。

 また、《「虎に翼」から「新宿野戦病院」にキャスト引っ張りすぎだよね。だから見てると複雑になるのよ》など、出演者かぶりに戸惑う声もある。これは放送開始から指摘されていて、「あの役をやっていた人がこんなことやっている」と楽しめる一方、それがノイズとなり、本作での役をそのまま受け入れられないという弊害もある。どうしてもバイアスがかかってしまうのだ。

 また、コロナ禍を思い出させるような新種ウイルスを、民放地上波のGP帯で扱ったことは画期的かもしれないが、1話分で終わらせたため、描き方が浅いように感じられた。結果、感想が「あの時はこんな感じだったな」ぐらいで終わってしまい、ドラマとしての深さが欠けていたのは残念。もっと話数を使って描いていればと感じてしまった。

 そもそも本作は、全体的にエピソードの掘り下げ方に甘い印象がある。これは、登場人物が多いため、描ききれないところもあるのだろうが、つくづく惜しい。世帯視聴率が6%台と5%台を行き来するばかりで、終盤になっても数字が伸びてこないのは、この“描写の浅さ”や“出演者かぶりの多さ”があるように思える。

 最終回は、ウイルスが収束したあとが描かれ、ヨウコは第二波が来ることを想定し、熱意を持って世間に働きかけるが、無資格で手術していたことが報じられ、院長の高峰(柄本明/75)と逮捕されるようだ。物語をどう収めるのか、注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。