■最後はフライパンに蓋をして余熱で火を通す

 まずはサンマの頭と尻尾を切り落として、さらに真ん中で2つに分けるのが道場流。よく見かける一本焼きよりも、ずいぶんとコンパクトに感じるが……。

「火の通りやすさは変わらないけど、小さいフライパンでも調理できるし、お皿にのせやすい。手軽でしょ。塩を振ったら、サンマに油を塗るか、フライパンに軽く油を引く。中火で2〜3分焼いて、ほどよく色がついたらひっくり返します。逆の面も同様に、焼き色がついたら、火を止め、蓋をして余熱で火を通します」

 これなら、微妙な焼き加減を目で見て調整しやすい。

「付け合わせとしてカボスやスダチ、レモンがあれば、申し分ない。大根おろしは必ず絞って水分を切ってください。しょうゆを垂らす“染め下ろし”は、2割くらいしょうゆがかかっているバランスがベストでしょうね」

 人によっては「塩を振るタイミングは焼く30分前」などと主張するが、鉄人は「僕は面倒くさいから振ったら、すぐ焼いちゃう」と笑い飛ばす。

編集部で実践した“道場六三郎”流サンマの塩焼き。しっとり、ふっくらした身の塩焼きが完成。 ※画像/編集部
編集部で実践した“道場六三郎”流サンマの塩焼き。しっとり、ふっくらした身の塩焼きが完成  画像/編集部

■オススメ「サンマのサンショウ煮」の作り方

「塩焼き以外では、“サンマのサンショウ煮”がオススメ。酒と水を120cc、みりんと醤油を40cc、砂糖を大さじ3。この合わせじょうゆを、頭を落として3センチほどにぶつ切りにしたサンマと圧力鍋で煮る。合わせ醤油の量は、サンマが半分浸かるくらいかな。生姜と粉ザンショウも、忘れずに入れておく」

 鍋が吹き上がったら、火を止め、5分置いて「骨まで食べられる」サンショウ煮の完成。

 圧力鍋は「腕に差が出ないから、初心者こそオススメ」だそう。

「ワタからもおいしさが出るのがサンマの素晴らしいところ。この季節ならではの味を楽しみましょう!」

 今夜の晩酌の肴に、ぜひ“道場式”をお試しあれ!

道場六三郎(みちば・ろくさぶろう)
1931年1月3日、石川県生まれ。上京後、日本料理店での修業を重ね、71年銀座「ろくさん亭」開店。90年代の伝説的人気テレビ番組『料理の鉄人』(フジテレビ系列)料理対決では、31戦27勝3敗1分と圧倒的強さを誇った“和の鉄人”。2000年銀座に「懐食みちば」を開店。07年旭日小綬章受章。コロナ禍で始めたYouTubeチャンネル「鉄人の台所」が人気を博し、その極意をまとめた著書に『91歳のユーチューバー 後世に伝えたい!家庭料理と人生のコツ』(主婦と生活社)がある。