■信頼感抜群のTBSには2年前からスケジュールを渡すことも
そんななかにあって、TBSのドラマは芸能プロ関係者の間でも特別だという。
「TBSドラマは別格です。特に日曜劇場と火曜午後10時の『火曜ドラマ』は数字もいいですし、業界内の注目度も高い。どこのプロダクションも“日曜劇場と『火曜ドラマ』にうちのタレントを出したい”と思っているでしょうね」(前出の芸能プロマネジャー)
『半沢直樹』や『VIVANT』をはじめ、日曜劇場の枠は高視聴率が当たり前のようになっている。また、『逃げるは恥だが役に立つ』や『恋はつづくよどこまでも』など、女優が主人公の「火曜ドラマ」は社会現象を巻き起こすことも少なくない。
「女優なら『火曜ドラマ』の主演、男優なら日曜劇場のメイン級キャストを目標に掲げるわけです。“TBSのドラマに出演できるなら……”と、2年前から担当俳優のスケジュールを渡すマネジャーもいるくらいですよ」(前同)
別の芸能プロ関係者は主要民放キー局のドラマについてこう話す。
「僕は、フジ→TBS→テレ朝→日テレの順でドラマ出演を優先しますね。最下位にした日テレは……セットや小道具1つとってもセンスが感じられない。チープというか。もちろん、すべての日テレドラマがそうではないのですが、コントのセットのようなときもある。思わず“ここで撮るの?”と声が出そうになる。予算も少ないのでしょうが、それにしてもセンスがないんです。
テレ朝はやはりシニア向けですよね。ただ、ドラマ自体はしっかりと作っている印象です。TBSはさらにしっかりと作り込んでいる。脚本も時間をかけて練り上げている感じで、視聴者層を明確に設定している。日曜劇場なら40歳以上のサラリーマンの男性、『火曜ドラマ』は30歳以上の女性といった具合で、ターゲットをしっかり定めて、狙った層にしっかりと刺さっていますよね。だから、作品ごとに大きなブレもない。
一方で、最近のフジはバラつきがありますよね。月9を見てみても木村拓哉さん(51)主演の『風間公親-教場0-』の次のクールに森七菜さん(23)主演の『真夏のシンデレラ』を放送するなど、ターゲット層も内容もバラバラ。これだけバラつきが出るのはフジのドラマにおいてはプロデューサーが大きな権限を持っていて、プロデューサーがやりたい作品をやるからだと言われていますね。
ただ、ずっと子どもの頃からフジのドラマばかり見てきたし、僕は一番愛着があります。素晴らしい作品を生み出してくれるという期待感をまだ持っているのですが……」
最後に、別の芸能プロ幹部はこう話す。
「かつてと比べて現在は、地上波ドラマの視聴率が著しくダウンしています。配信が浸透した今、視聴者はなかなかリアルタイムでドラマを見てくれないですよね。だから、どこの局かよりも、“枠”を重視しています。出したいのはNHKの朝ドラと大河、あとはTBSの日曜劇場、あとは『ドクターX』がやっていたテレ朝の木曜日9時枠でしょうか。
それらの枠はまだ数字が取れますよね。俳優は、俳優のギャラだけでは食べていくのは難しいんです。視聴率が高く、影響力のあるドラマに出して、CMを取っていく必要がある。そうじゃないとプロダクションの経営も成り立たないんですよ。
それで言うと、TVerの存在も大きい。TVerが回れば、一定の影響力が示せて、話題にもなりますからね。そうなると、キー局の作品でなくてもよくなってくる。今は地方局のドラマでもTVerで配信しますからね。
どのテレビ局も一生懸命頑張っていますし、どこがダメとかはない気がします。でも、やはり予算の問題はありますよね。日曜劇場は1話4000~5000万円かけられるといいますが、他は1話2000万円台で作っているといいますからね。予算の差はありますよね……」
複数からクオリティ面の注文がついた日本テレビ、シニア向けだと言われるテレビ朝日、近年当たりはずれが激しいと言われるフジテレビ、そして他の3社と比べると予算面を含めて高く評価されるTBS――。他局だけではなく、韓国ドラマを始めとする海外ドラマや大手配信サービス、YouTubeなどの動画もライバルとして立ちはだかる状況で、地上波ドラマはどう生き残っていくのだろうか。