■朝ドラ視聴者層との埋めがたいミスマッチ
「『ちむどんどん』化を回避」のための2つ目のポイント――それは、“ハギャレン編”とも言える現在の物語に終止符を打ち、次の舞台に移ることだという。
主人公の結は元々神戸に住んでいたが、阪神・淡路大震災を受けて福岡に移住した、という背景がある。そして公式サイトには、高校卒業と同時に《かつて暮らしていた神戸の街へと、両親と共に再び戻ります。「栄養士になる」という、新たな夢と共に》と、綴られているのだ。
「最近は“若返り”を狙っているようですが、朝ドラの主な視聴者層は50代以上だと言われています。
そして、年配の視聴者にとって劇中の“ギャル文化”――より正確に言えば、平成初期のコギャル文化は馴染みが薄く、共感を得にくいですよね。全く刺さらず、離脱してしまったという声もSNSには寄せられています。劇中の舞台である2004年ごろに青春を過ごした世代は“懐かしい”という声もあるだけに、バランスは難しいところではありますが……」(前出のテレビ誌編集者)
現在の『おむすび』の内容には、
《平成ギャル期に青春過ごしたからファッションとか懐かしい》
《ギャル、原宿系、清楚系が混合してて楽しかった高校時代を思い出す》
《ギャルを美化してる訳じゃないというのも好感持てる 楽しい部分も描いてるけど、タテ社会っぽいコミュニティの延長みたいな描写とか》
といった、00年代に青春を過ごした世代から、好意的な声も多く寄せられている。
今後、『おむすび』に求められるものを、朝ドラウォッチャーでもあるドラマライター・ヤマカワ氏はこう分析する。
「“橋本環奈”という強いキャラが出来上がっているので、結を演じていても、朝ドラヒロインならではの、成長する前の”未熟さ”が感じにくいですよね。ただ、希望を感じるのは、結には震災を原因にした心の闇を感じるので、そこを繊細に演じれば、結のキャラが深くなり、成長する姿を表現できるでしょう。
視聴者に不評なギャルに関しては、このまま生温かい目で見守るとして……もっと結の家族を描くことで、朝ドラらしさが出ることに期待したいですね」
視聴者がSNSで喧々諤々沸騰しているのは、それだけ注目度が高いということ。まだ始まったばかりの『おむすび』は、どんな作品になっていくのだろうか――。
■ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。