■美味しいものも多いプラントベース食品、ネックは「価格」と「子どもウケ」

 植物性の材料に置き換えられるとなると淡泊な味になりそうだが、プラントベースの食品やメニューには美味しいものも多いようだ。実際、編集部でも『KOMEDA is □』でコメダ名物のシロノワールを頼んでみたが、言われなければプラントベースとはわからない美味しさだった。

 ただ、「子どもには不評かもしれない」と前出の森崎さんは指摘する。

「プラントベースのアイスが美味しかったので子どもにも買ってあげたんですけど、『サーティーワンのほうがいい』って言われちゃって(笑)。私たちが味を感じ取る味蕾(みらい)は加齢と共に減少するので、子どものほうがはるかに味に敏感。プラントベースのアイスだと牛乳は使わず、豆乳などの植物性のものに代替されるので、どうしてもコクが減ってしまいます。それに子どもの舌は大人よりも苦みや酸味を強く感じてしまうのですが、それをうまく隠してくれる生クリームなどの油分もプラントベースだと使わないでしょうから。なので子どもウケするプラントベースフードはなかなか難しいかもしれません」(森崎さん)

 価格の問題もある。『コメダ珈琲店』のシロノワールは700円台だが、『KOMEDA is □』のプラントベースシロノワールは税込み950円。素材にこだわらない人にとっては、割高に感じられる。

「値段のこともあるので、コンビニでの取り扱いが増えても、すごく売れるってことはないんじゃないでしょうか。あくまで、お金をかけてでもこだわりたい人たちに響くものなのかなと。糖尿病だったり、病気や体質の関係で食べられるものが制限されている人もたくさんいらっしゃるので、そういう人たちにとっては食べられるものの選択肢が増える可能性がある。プラントベース食品が広がること自体はすごく良いことだと思います。環境問題のこともありますしね」(前同)

 一方で管理栄養士の観点から「気を付けてほしい」と伝えたい部分もあるという。

「たんぱく質なんかも植物性のもので置き換えられますが、造血作用などを担うビタミンB12は基本的に動物性のものでしか摂取できないので、植物性100%の食事だと不足すると思います。栄養士としては、置き換えるにしても1日1食程度にすることをおすすめしたいですね」(同)

 “プラントベース”が謳われるより以前から大豆ミートなどは研究・開発されている。プラントベース食品は今後ますます進化し、味や栄養価においてもどんどん改善されていくことだろう。その意味ではまだまだ過渡期というところだろうか。

 マクドナルドは欧米で植物性の代替肉を使ったハンバーガーを試験的に販売したものの、割高な価格設定から思うように販売が伸びず、試験販売を22年に終了 したと報じられた。一方、古来から菜食に親しみのある日本では、アサヒコが20年に発売を開始し、スーパーやコンビニでもよく見られる『TOFU BAR(豆腐バー)』が年に1000万本売れる大ヒット商品 となるなど、プラントベース食品が広がる下地はすでにある。日本が“プラントベース先進国”となる未来はそう遠くないかもしれない。

森崎友紀
1979年生まれ。大阪府出身。大学を卒業後、私立病院や小学校の管理栄養士、料理教室講師などを務める。
その後、料理研究家として独立。レシピ制作、料理番組の企画・出演を手がける傍ら、タレントとしてもテレビ・ラジオ番組に出演、またモデルとしても活動。
現在は、株式会社UNITY MAGENTA代表を務め、トークショーや料理教室などのイベント活動、講演会、美容と健康に関するサイト運営、企業レシピの提案、メニュー開発などを行っている。