■バンドTに「100万円」⁉︎ 5年で10倍になる背景は
また、ヴィンテージ古着といえば「ヴィンテージTシャツ」も熱視線を浴びている。音楽や映画、アニメなどのジャンルがあるが、とりわけ「ロックT」「バンドT」などと呼ばれる音楽バンド系のTシャツは人気で、なかでも「ニルヴァーナ」の高騰ぶりは有名だ。
87年に結成し、90年代初頭にブームとなった「ニルヴァーナ」。91年発売のアルバム「ネヴァーマインド」が全世界で3000万枚を売り上げるなど人気絶頂のなか、ボーカルのカート・コバーンが94年に27歳で急逝、解散したという伝説的バンドである。
「ベルベルジン」系列のヴィンテージTシャツ専門店「ベルベルジンYuhodo」の副店長・岡部さんが、バンドT人気は「2010年代ぐらいからじわじわ上がってきた」と振り返る。
「海外のアーティストやセレブ、スター、ファッションデザイナーといった人たちがバンドTを着用する流れがあるなかで、ニルヴァーナはその希少性とジャスティンビーバーら著名人の着用もあり、世界的に値段が上がってきている状態です。今までTシャツは相当な古着好きの一ジャンルでしたが、全体の裾野が広がりました」(岡部さん)
相場が上がる理由には、人気者の着用やメディアへの露出が大きいことがうかがえるが、日本でもそうした古着好きを公言する芸能人は多い。それでは、こと日本市場においても彼らの影響はあるのか。
「そもそも古着の値付けは店によって変わってくるものです。今はYouTubeやインスタなどもあり、“あの店、あれをいくらで売ったらしい”という情報が業界内で出回ると、次はそれよりも高い値段がつけられますよね。そういう意味では芸能人やSNSの影響は大きいですし、相場にも関係してくると思います」(前同)
そんな同店で最近売れた“高額”バンドTはというと、岡部さんによればアメリカのロックバンド「ダイナソーJr.」のTシャツで、50万円のもの。業者界隈には、自店なら100万円で売る――という噂もあったそうだが、仮にそれが100万円で売れていたら、次に値付けをする人は100万円よりも高い価格を設定する。そうしてどんどん高騰するということなのだ。
岡部さんは、そんな「ダイナソーJr.」のTシャツについて「5年前なら同じ商品が5万円ぐらいだったのでは」と話す。Tシャツだって、5年前から10倍の価格で取引されるとは想像だにしなかっただろう。