■ツッコミがいがない『潜入兄妹』

 ドラマが盛り上がらない理由はほかにもありそうだ。まず、ドキドキハラハラを演出するシーンが、あまりにチープすぎるのだ。『占拠』シリーズはCGやアクションが同じくチープだったものの、爆発や落下などあり、見た目はかなり派手だった。派手なぶん、ツッコミがいもあったのだが、本作は潜入先でペンを落として見つかりそうになるなど、どうにも寂しい。結果、X上でのツッコミの声も回を追うごとに減っている。

 また、今回は九頭竜という、ラスボスらしき存在の匂わせがあった。そのためX上では、《『大病院占拠』に紫鬼、『新空港占拠』に戌(いぬ)がいたように、幻獣にも九頭龍という警察内部に潜む内通者(裏切者)がいる?》《幻獣を操っている黒幕がいるね。それが九頭竜で、正体は及川光博演じる入間かな》などと考察する声が。

 早くも次回、第5話で幻獣のリーダー・鳳凰の正体が明らかになるらしく、第6話以降は九頭龍の正体で引っ張るつもりだろう。しかし、視聴者の指摘にある通り、警察の身内に内通者というのは、前2作でもやっている。 パターンからすると、神奈川県警の刑事・入間慎之介(及川光博/55)で正解だろう。

 中盤以降のヤマに、九頭龍の正体を明かすエピソードをもっていきたいのだろうが、ここまでバレバレだと、残念ながら今後も盛り上がりそうにない。はたして、視聴者の想像を超える、どんでん返しが用意されているのだろうか。

 本作は『占拠』シリーズのヒットの法則に従っているのだが、トンチキ演出もミステリー要素も少しずつズレていて、演出が逆に欠点になってしまっている。これでは寂しい数字も当然だろうが、物語はまだまだ序盤。『占拠』シリーズにとらわれることなく、独自の展開で盛り上がることに期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。