■橋本環奈パワーで見過ごしがちだが
突然の恋の自覚、両思いだけど野球に専念したいからと条件付きの告白。「結が幸せならそれでいい」と身を引く幼なじみ。ラブコメ要素が全部入りのキャッチーな内容だったが、それよりも、水を得た魚のように生き生きとした橋本が印象的。これまでの重めな空気を吹き飛ばす明るさこそ、ハシカンパワーと言えるだろう。
一方で展開の粗さ、心理描写の少なさが気になった。結の恋の後押しをした陽太(菅生新樹/25)の、そこに至るまでの切ない葛藤も描いてほしかったのだ。陽太がリサポン(田村芽実/26)に、結には好きな人がいると教えた事実と、釣りをしながら恵美(中村守里/21)に結への思いを告白しただけでは、正直深みを出すことができていなかった。
また、ここまで糸島食材の料理をさんざんフィーチャーしてきたのに、弁当の中身を映さず、エピソードも最初の豚レバーぐらいで、皆無だったのも残念。毎日、好きな人に作った弁当であり、栄養士を目指すきっかけになるのだからここはちゃんと見たかった。翔也のために作ったメニューが後の展開の伏線になるとか、そういう使い方もできると思うのだが……。
ハシカンパワーのおかげで気づきにくいが、ところどころの演出に上記のようなアラがあるのは事実。次週から、結が糸島を離れて栄養専門学校に通う、仕切り直しとなる神戸編だが、それが足を引っぱることになるかもしれない。あるいは、アラを吹き飛ばすハシカンパワーが炸裂するか……。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。