■撫・玉井詩織の物足りなさ

 ここまで恋愛要素は控えめで、ボクシングのシーンが多かった本作。ほこ美がプロを真剣に目指すようになると、奈緒の演技も素人モードからガチモードに。ボクサーとしての体作りをしてきただけあって、動きのキレも良くなっていて、今回のスパーリングシーンも迫力があって見入ってしまうほどだった。

 ただ、ラブコメ枠の火曜ドラマとしては、もう少し恋愛パートに時間を割いたほうが、視聴者は盛り上がったかもしれない。前回から当て馬の大葉が一歩リードしてきたことで、ようやく物語は盛り上がってきたが、ちょっと遅かった。

 そして、ほこ美の職場の同期で友人の新田撫(玉井詩織/29)が、ほこ美の敵役として今ひとつなのも、恋愛ドラマとして盛り上がっていない要因のひとつ。意地悪の理由をあれこれ言っているが、結局は「ムカつくから」にすぎず、邪魔をしてきてもハラハラ感に欠けてしまう。

 同じく、2人の恋の邪魔をする、海里の同居人・相澤悟(倉悠貴/24)も、ここまでの展開で、海里との試合後に亡くなってしまった、平山大地(大東駿介/38)の生き別れの弟というのがバレバレ。ほこ美と海里の恋を盛り上げるのに必要な、不穏な感じがいまひとつ足りない。

 これらのため、視聴者のほこ美と海里の恋を応援しようという、気持ちが盛り上がってこないのだろう。いっそ、ボクシングを絡めた恋愛ドラマより、恋愛を絡めたボクシングドラマで作ったほうがよかったかもしれない。

 次回は、ほこ美が母・明美(斉藤由貴/58)からボクシングを辞めるように言われ、海里は悟からの妨害がさらにエスカレート。恋愛以外にもピンチは続きそうだが、それでも火曜ドラマなので、終盤は2人の恋がメインになると期待したい。その結末に注目だ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。