■優秀な若手・中堅社員をスカウトする動きが加速
1月30日、フジテレビとフジ・メディアHDがそれぞれ取締役会を開いたが、その後の囲み取材でフジテレビの清水新社長は、日枝氏の進退について「そこまでの議論にはなっておりません。まずはこの事案の概要、経緯、そういうものに対して検証していきたい」とコメントした。1月31日のTBSのニュースでは、フジテレビの取締役の一人の証言として「継続の意思がある人に退任してもらうのはすごく難しい」という言葉が報じられている。
さらに2月3日には、フジテレビの大株主である米ファンドのダルトン・インベストメンツが、今回の問題での3通目の書簡を送ったことが明らかに。日枝氏の辞任を求める書簡では、日枝氏が取締役会で完全な支配力と影響力を持っていることを主張し、同社の企業統治の機能不全を指摘しているという。
「“日枝氏包囲網”は狭まってきている感じですが、実際に“フジサンケイグループのドン”が約40年にも渡って君臨したその座を離れるかどうかは、まだ分かりませんよね……。
そんななか、フジテレビ内で目立ってきているというのが、若手、そして中堅社員の転職への動きです。若手が数人集まると決まって転職の話題が持ち上がるそうですからね。CMスポンサーがいつ戻って来るか見えないことに加えて、多くの社員も疑問に感じている日枝体制が変わらない空気感にも絶望視する若手は多い。ベテランの社員の間では“これを機に、何人かの若手が辞めるのはしょうがない”という空気も漂っています。
そして、そう思わせるのが、他社のスカウトの動きなんです。実際、フジの若手、そして評判の良い中堅社員にスカウトが来ているといいます。それは他のテレビ局に加えて、他業種からもヘッドハンティングしようという動きがあるんです。おそらく、大手IT企業、広告代理店などが動いているのではと」(フジ関係者)
以前から、テレビ局からNetflixなどの他メディア、IT企業、そしてコンサルティング会社などに転職するケースも少なくない。
「今や新入社員の初任給40万円超というIT企業もありますからね。大手企業なら、給料の面でもフジと劣らない額を提示できるでしょう。このままでは、フジテレビは人材の草刈り場になってしまいそうです……。
そもそもフジ社員には、いい大学を卒業し、数百倍、数千倍の倍率をくぐり抜けたポテンシャルの高い人材が多い。それに若手はまだ頭も凝り固まっておらず、新しいことにもどんどん挑戦していける可能性を秘めている。
まずは、バラエティとドラマを制作する社員に声がかかり、さらには報道畑の若手にもオファーが舞い込む状況となってきているようです」(前同)
会社の状況が状況だけに、上層部も若手社員を強く慰留することはできないかもしれない。
「特に他局は近年、人手が不足していて、生きの良い若手や評判の良い中堅のテレビマンを喉から手が出るほど欲していますからね。そして、今ならそんなフジテレビの若手が自社に来てくれるハードルが大幅に下がっていて、他局は現在の状況を、千載一遇のチャンスだと捉えている。
そして、この若手や実力のある中堅社員が流出しそうな状況を憂う声も多いですね。このことが、今回の騒動で最も痛恨の事態なのでは、という意見もあります。会社のリスタートは、人がいなくては不可能なことですからね。特に若いエネルギーや新しいアイデア、考え方が失われてしまうというのは、会社にとってはあまりにも大きな損失です……」(同)
現在、フジの有望な若手、中堅社員には他社からのオファーが舞い込んでいるというが、そんな状況を日枝氏はどう見ているのだろうか――。