■人の手によって生まれた交雑種とは
サルとシカ、インコとヒトでは子供が生まれないというのは、理解できるが、世には異種同士から生まれた“交雑種”が存在している。
「ライオンの父、トラの母から生まれた“ライガー”、ヒョウの父、ライオンの母から生まれた“レオポン”は過去に日本でも飼育されていました。
とはいえ、自然界で目撃されたことはなく、ライオンとトラに関しては生息域も異なるので完全に人の手による繁殖。ウマとロバから生まれた“ラバ”同様に一代交雑で、生まれた交雑種は繁殖能力を持たないことがほとんどです」
その他にも、クジラとイルカ、ラクダとリャマ、ヒツジとヤギなど、交雑種の種類は意外にも多い。しかし、どの種も“繁殖能力のなさ”ゆえに、爆発的に数が増えることは考えにくいという。
「一方で、“外来種”との交雑が問題にもなっています。外来種であるアカゲザルとニホンザルは、見た目も近く、交雑種も繁殖が可能。繁殖が進むと遺伝子汚染が広がり、純粋なニホンザルがいなくなる懸念があるんです」
世にも不思議な異種交配の世界。さらなる研究の進展が待たれる。
パンク町田(ぱんくまちだ)
1968年8月10日生まれ。東京都出身。動物研究家。NPO法人生物行動進化研究センター理事長。最も好きな動物は犬。ムツゴロウさんこと畑正憲(はたまさのり)から「犬のことをもっと勉強しなさい」という言葉を励みにしている。犬の訓練士でもあり、愛玩犬のしつけ、猟犬、バンドッグ(護衛犬)、闘犬の訓練も行う。父が中華料理店を経営していた影響で当初は料理人を目指していたが、動物に関わる仕事を諦めきれずトリマーの専門学校に進学した。ペットショップ勤務ののち21歳で独立、爬虫類のバイヤーなどを務めた。1992年から動物の専門誌などで執筆活動を始めた。人気著書多数。