■「翻訳者募集」で「月60万円と成功報酬」
ミャワディには「KKパーク(KK園区)」と呼ばれる“詐欺団地”が存在する。先日も外国人約7000人が解放されたばかりだが、強制的に働かされているのは全体で1万人とも5万人ともいわれている。
「僕自身も募集に応じるふりをして、日本人を募るリクルーターに近づいたところ、“月60万円、それとは別に成功報酬が上乗せされる”と言われました。もちろんその60万円だって払われないに決まっています。“翻訳者募集”とうたわれていましたが、実際は軟禁状態で、偽の仮想通過やロマンス詐欺、警察を騙った詐欺電話の“かけ子”をさせられるのでしょう」(ビリー高橋氏=以下同)
タイとの国境に面したカレン州には、ミャワディ以外にも複数の犯罪都市が点在するという。
「男性だけでなく、日本人を含む外国人女性も売春に従事させられるなどの被害に遭っています。特殊詐欺拠点に着いたとたんに、パスポートもスマホも没収されたうえ、ケタミンやMDMAなどでクスリ漬けにされることもある。
みんな騙されて、車やボートでこの街に強制連行されてくるんです」
これだけ大掛かりな犯罪であるにもかかわず、実際に指示を出す中国人グループの全容は掴めていない。
「中国人マフィアは表に出ることを極度に嫌います。日本の暴力団のように、“〇〇組の看板を背負う”などという意識もない。
現地で詐欺を実際にやっている人たちも、自分が誰の命令で動いているのか把握できていないはずですよ。闇バイト要員を集めるリクルーターだって、結局は使い捨て要員。自分たちのボスが誰なのか、誰ひとり知らない」
救出されたとしても、日本に帰国後は特殊詐欺の実行犯として起訴される。軽い気持ちで誘いに乗ったら、引き戻せなくなる。
「ミャンマーの特殊詐欺拠点から日本人約10人が逃走したとの報道もありますが、まだ表面化していないだけで、日本人の死者が出ている可能性もあるでしょう」
事件の闇はあまりにも深い。
ビリー高橋
1968年、東京都生まれ。タイや東南アジアの裏社会事情に明るいライター、ブロガー。特にゴールデン・トライアングル経済特別区で被害が拡大する“令和版からゆきさん問題”や中国マフィア犯罪組織に関しては、他の追随を許さない情報量を自身のnoteやX(旧ツイッター)で展開。人生再インストールマガジン『シックスサマナ』でも健筆をふるう。