■松坂『シンケンジャー』が残した3つの伝説
そんな『シンケンジャー』は現在も根強い人気を誇るだけでなく、多くの伝説を残している。
1つは、前述のように松坂が従来の“戦隊レッド”とは違うイメージの主人公像を生み出したこと。『シンケンジャー』以前から戦隊レッドの性格は多様化していたが、シンケンレッドはそれらと比べても唯一無二だった。演じた松坂のキャリアにも影響したところがあるのか、彼は後に『VIVANT』(TBS系)の名脇役・黒須など、ダークな役も似合う俳優へと成長した。
2つ目は、作品が戦隊史上屈指の人気作であることだ。アクション面では俳優陣が生身でハイクオリティな殺陣を披露。シナリオ面ではあまりにも衝撃的な終盤の展開、巧みな伏線など、見どころ盛りだくさん。放送から16年が経つ今年8月にも、変身アイテム「ショドウフォン」の大人向け新作玩具が発売予定であるなど、現在も大人気なのだ。
その人気ぶりを象徴するエピソードに、本編完結直後に発売された番外編DVD『帰ってきた侍戦隊シンケンジャー 特別幕 超全集版』(2010年6月発売)の存在がある。
まず、テレビシリーズ終了後、単独でVシネマが発売されたのは本作品が初(※前年度戦隊とのVSシリーズは除く)。しかも、同DVDは『オリコン週間DVDランキング』で初週約1万5000枚を売り上げ総合首位を獲得したが、特撮作品のDVDが総合1位になるのは『オリコン』史上初の快挙でもあったのだ。
そして3つ目の伝説は、松坂が大成したことで、一般層の間でも“戦隊俳優ブーム”が生まれたことだろう。
というのも、2000年代頃からバラエティ番組で「実はあの俳優が……」と、特撮出身の俳優が紹介される機会が増えていたが、実際には『仮面ライダークウガ』(00年)主演のオダギリジョー(49)や、『仮面ライダー電王』(07年)主演の佐藤健(35)など仮面ライダー俳優が目立つ一方で、爆発的な売れ方をする“戦隊俳優”は出てこない時代でもあった。
『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年)出身の玉山鉄二(44)など『シンケンジャー』以前にも戦隊出身の人気俳優はいたが、松坂のブレイクを皮切りに、2010年代から戦隊出身の超売れっ子俳優が急増した感があるのだ。