■日本語特有の問題も対応が進み、紙の本にはない利便性も

一方で、書き言葉が耳に入りにくい、日本語特有の同音異義語が聴き取りづらいといった課題も。こうした問題に対しては、ナレーションを口語調に変えたり、文脈やイントネーションに工夫を加えたりするなどの対応が進んでいます。
また、再生速度の調整やブックマーク機能など、紙の本にはない利便性もオーディオブックの魅力と言えるでしょう。夜のリラックスタイムや家事中など、“耳が空いているすきま時間”を有効活用できる点も、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する現代人のニーズに合っています。
欧米ではすでに日常生活の一部として浸透しており、特に北欧では若年層の6割以上がオーディオブックを利用しているといいます。日本でも今後、通勤や家事、育児などの“ながら時間”を活用する新しい読書スタイルとして、さらなる広がりが期待されています。
オトバンクの調査によれば、オーディオブックの認知度は59%に達し、利用者数は過去2年で6割も増加。今や音楽・ラジオに続く“第3の耳コンテンツ”として確かな存在感を放っています。
出版業界が苦境にある今、「読む」から「聴く」へと進化した読書体験は、耳で楽しむ新たな文化として、着実に生活の中に根付いていきそうです。
トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。