日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が現代のトレンドを徹底解説。今回は、忙しい現代人にひそかな盛り上がりをみせる“聞く本”の話題をお届けしたい。
出版業界では近年、市場規模の縮小が進行しており、かつて2・5兆円あった紙と電子を合わせた推定販売金額は、現在1・5兆円前後にまで落ち込んでいます。特に雑誌や文庫本の売れ行きが低迷し、価格の上昇も相まって、本離れの傾向がより一層明らかになってきました。
SNSや動画、スマートフォンの普及により、目が常に忙しく、紙の本に手が伸びにくくなっている中で、支持を集めているのが耳で楽しむ「オーディオブック」です。
これは、ナレーターや俳優が本を読み上げる音声コンテンツで、スマートフォンやタブレットで手軽に再生できるのが特徴。通勤中や家事の合間など、目や手がふさがっていても“読書”が可能なため、多忙な現代人のライフスタイルに合っているとして注目されています。
日本では1980年代から類似の形態は存在していましたが、きっかけとなったのはスマートフォンとワイヤレスイヤホンの普及。この10年で利用者は30倍に増加し、「audiobook.jp」などの配信サービスも急成長しています。運営会社のオトバンクによると、同サービスの会員数はすでに300万人を超えているそう。