■実際にクマに遭遇した場合の対処法
実際にクマに遭遇した場合にはどうしたらいいのだろう。
「クマは背を向けて逃げる動物を追いかける習性があるので、そこから動かないか、背中を向けずに後退して距離を取りましょう。もし目が合ってしまっても、そらしてはいけません。
クマはイヌ並みの嗅覚に加えて、“表情から感情を読める”動物。あくまで恐れずに気がつかないふりをすることが大切です」(パンク町田氏)
もし、それでも距離を縮めてくるようなら……。知床財団が提唱する対処法は、以下の通りだ。
「クマが立ち上がったり四つんばいの姿勢で鼻をヒクヒクさせる行動は、相手を確認するためのもの。
(恐怖心を抱く対象である)人間だということを知らずに来ている可能性があるので、クマに人間だと認識させるため、石や倒木などに上がり、大きく腕を振りながら、穏やかに声をかけましょう」
クマに左利きが多いのは本当か?
「左利きが多く確認されているという話は実際にありますが、科学的には実は不透明。それに、襲ってきた際に利き手を気にする余裕はないでしょうね」(パンク氏)
万が一、明らかに攻撃の意志をもってクマが立ち向かってきたら知床財団は「防御姿勢」に関して、こう説明する。
「うつ伏せになって顔と腹部を守り、首の後ろは手を回して保護する。バックパックがプロテクターになります。転がされても、その勢いで元の姿勢に戻る」
また、パンク氏によると、ツキノワグマに対しては抵抗することが、かえって生存率を高めるともいう。
「エサと見なして襲うヒグマは逃げたほうが得策ですが、縄張りから追い出したかったり興味本位で近づいているツキノワグマは、抵抗することで逃られる可能性はそれなりにあります。
弱点である鼻面を棒で叩いたり、両目を覆い隠して一瞬の隙を作ると、効果的ではないでしょうか」
日本に共生する人間とクマ。もしものときに大事な命を守るため、これらのマニュアルを頭に叩き込んでおきたい。
パンク町田(ぱんく・まちだ)
1968年8月10日生まれ。東京都出身。動物研究家。NPO法人生物行動進化研究センター理事長。最も好きな動物は犬。ムツゴロウさんこと畑正憲(はたまさのり)から「犬のことをもっと勉強しなさい」という言葉を励みにしている。犬の訓練士でもあり、愛玩犬のしつけ、猟犬、バンドッグ(護衛犬)、闘犬の訓練も行う。父が中華料理店を経営していた影響で当初は料理人を目指していたが、動物に関わる仕事を諦めきれずトリマーの専門学校に進学した。ペットショップ勤務ののち21歳で独立、爬虫類のバイヤーなどを務めた。1992年から動物の専門誌などで執筆活動を始めた。人気著書多数。