■盛り上がらない『初恋DOGs』の三角関係
やっと3人の恋愛展開が始まったかと思えば、韓国に行ったり、相楽(森崎)による快の病院の買収問題がまだ続いていたり、愛子(清原)が事務所を辞めて独立して不安になったりと、まとまりのない展開だった。はしばしにキュンを入れてくるが、トピックが多すぎて集中できない。明らかに盛り込み過ぎで、来週で終れるのかと、視聴者が心配するのも当然だろう。
一方、恋の行方は、《好きだともハッキリ言わず小石を渡してくる男より、心が折れそうなタイミングで海の向こうから駆けつけてくれる男の方が断然いいと思うんですけど!》《最終回は普通にソハが幸せになりますように!ここまでの当て馬予想を覆してもらえますように》など、ソハ(ナ・イヌ)推しが圧倒的だ。
どっちに転ぶかわからない、ドキドキを楽しむのが三角関係ドラマ。それなのに、視聴者はソハ推しだらけというのは、明らかにドラマとしてバランスが悪い。恋愛以外のエピソードが多すぎて、3人の心の動きを描くシーンが足りないのだ。公式サイトの宮﨑プロデューサーのコメントに「日韓スタッフがそれぞれのアイデアを持ち寄り」とあるが、本作のまとまりの悪さは、それが裏目に出てしまったのだろうか。
本作で、動物病院の看護師を演じている野呂佳代(41)は、『ザ・トラベルナース』シリーズ(テレビ朝日系)、『アンメット ある脳外科医の日記』(フジテレビ系)、『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)、『ホットスポット』(日本テレビ系)など、出演ドラマがどれも良作で、視聴率の数字も好調続きだった。
そのため、“野呂佳代が出るドラマにハズレなし”伝説があるが、春ドラマ『なんで私が神説教』(日本テレビ系)の苦戦に続き、夏ドラマ『初恋DOGs』が撃沈となってしまったら、それも途絶えてしまいそうだ。今回も、経営難で落ち込みそうな動物病院の雰囲気を強引に持ち上げてしまう、憎めない陽キャ感を発揮していたのだが――。
残るは最終話のみ。愛子と快(成田)が病院を守るために裁判へ向けて動き出す中、ソハは快に裁判が終わったら愛子にプロポーズをしようと思っていると告げる。快は複雑な思いを抱きながらも、ソハの背中を押すようだが、三角関係の行方と、とっちらかったドラマをどうまとめるのかに注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。