プロ野球の日本一を決める頂上決戦である“日本シリーズ”。毎年、球史に残る死闘が繰り広げられてきたが、その裏に何があったのか!? 名シーンを振り返る。

 今でも語り草なのが、1979年の広島VS近鉄。日本シリーズの名シーンと言えば誰もが真っ先に挙げる“江夏の21球”で知られる。

 先の記者も、こう話す。

「いくら江夏豊といっても、たった1点リードの無死満塁。当時はまだあったスポーツ各紙の夕刊一面は、地元近鉄の初優勝でほぼ決まりかけていたんです。

 それが抑えちゃったもんだから、紙面の差し替えから配送トラックへの根回しまでもうドタバタ。先輩方からは“あのときは戦場のようだった”と、我々もよく聞かされたものです」

 結局、一度も日本一になれなかったその近鉄は、89年にも話題を提供。加藤哲郎の「ロッテより弱い」発言を端緒に、巨人に3連勝から4連敗というドン底を味わうことになったのだ。

「加藤さんの“シーズンのほうが大変だった”という趣旨の発言を、マスコミが誇張して報じたのがそもそもの発端。その意味では、我々が流れを変えてしまったシリーズでもありました。

 前日、緊張で顔が真っ青だった香田勲男がシリーズ初登板初完封。あげくには第7戦で、引退が決まっていた中畑清まで代打アーチを放つんですから、本当に流れは怖いです」(前同)