今年は春ドラマ『波うららかに、めおと日和』、夏ドラマ『愛の、がっこう』と、ヒットを連発したフジテレビ系ドラマだったが、秋ドラマは揃って惨敗してしまった。何がいけなかったのだろうか――。

 まず、草なぎ剛(51)主演の『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』(カンテレ・フジ系)は、5年前に妻を亡くし、幼い息子を男手ひとつで育てている遺品整理人・鳥飼樹(草なぎ)が、遺品整理会社の仲間たちと共に、孤独死した方の遺品に刻まれた“最後のメッセージ”に耳を傾け、残された者へのメッセージを解き明かすヒューマンドラマ。

 ヒット作「戦争シリーズ」(同局系)のスタッフ、東京ドラマアウォード2024の単発ドラマ部門グランプリを受賞した『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』(NHK)の高橋美幸氏による脚本、演技力も認知度も十分な草なぎが集結したが、第10話までの平均視聴率は4.6%(すべてビデオリサーチ調べ/関東地区)。23年『罠の戦争』の全話平均が8.4%だったことを考えると、激減と言わざるを得ない。

 その原因は、何より放送前に期待していたのと、ドラマの内容が違っていた。これがすべてだろう。遺品整理という、涙を誘う感動劇にうってつけのテーマだったのに、蓋を開けてみれば、大企業の闇、不倫、毒親、ジェンダーなど、明らかにネタを詰め込みすぎで、なんのドラマを見ているのかわからなくなってきた。

 ネタが多すぎてストーリーが大渋滞しているうえ、中盤からは後継者争いに複雑にねじれた恋愛感情まで盛り込まれ、韓国ドラマ化してドロドロの展開。これまで難しい役を見事に演じ、感動を呼んでいた草なぎでも、抱えた問題が多すぎて主人公・鳥飼の人物像がボヤケてしまうほどだった。事前に制作側が構成を整理できていれば、こんな脚本にはならなかったはずなのだが。