■菅田将暉の努力が報われない…
そして、菅田将暉(32)主演の『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう(もしがく)』だ。同作は、三谷幸喜氏の半自伝的な要素を元に、1984年の渋谷の架空の街「八分坂」を舞台にした青春群像劇。共演は、二階堂ふみ(31)、神木隆之介(32)、浜辺美波(25)らと、主役級ぞろいだった。
三谷幸喜氏の25年ぶりの民放GP連ドラ脚本に加え、豪華キャストが話題となったが、平均世帯視聴率が2%台に落ちることもあり、最終的に全話平均は3.7%。裏番組に最強のバラエティ『水曜日のダウンタウン』(TBS系)があるとはいえ、あまりにも期待外れで大爆死と言わざるを得ない。
三谷氏本人が描きたかったというのだから仕方ないが、令和の時代に“小劇場”と“シェークスピア”は、さすがに見る側もピンとこなかったのだろう。X上で反応していたのが、三谷氏が手掛けたドラマ、映画、舞台のファンと、演劇経験者ばかりというのが、それを証明している。
俳優たちは素晴らしかった。特に菅田は、クズな主人公・久部が周りに迷惑をかけながら、夢を実現させようともがく姿を熱演。しかし、久部は最後まで成長することはなく、視聴者をイライラさせたまま最終回を迎えた。そんな主人公を菅田は好感度など振り捨てて演じていたが、結果がこれでは報われないだろう。
ほかの豪華キャストも、もったいない扱いばかり。特に浜辺美波は、今さらおぼこいキャラで服装もダサく、本筋の周りをウロウロしているだけ。最終回にようやく舞台に立ってみせたが、遅すぎだ。NHK朝ドラ『らんまん』ヒロインや『NHK紅白歌合戦』の司会を務め、国民的俳優となったのに、浜辺ファンはこれで納得できたのだろうか。
大御所脚本家にオファーした以上、あがってきた脚本をスタッフが否定するのは難しいことは想像できる。ある意味で、仕方のない失敗だといえる。遅筆な三谷氏が撮影前に脚本を書き終わっていたらしいが、これも仇になってしまった。昭和の渋谷の繁華街を再現した巨大オープンセットまで作ったのに、もったいない話だ。
2026年1月スタートする冬ドラマでは、月9ドラマ『ヤンドク!』(フジテレビ系)で、橋本環奈(26)主演、根本ノンジ氏脚本という、NHK朝ドラ『おむすび』コンビが復活。元ヤンキー娘の脳神経外科医が主人公の痛快医療エンターテインメントで、嫌な予感がしてしまうが、はたしてどうなるだろうか。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。