■親父から聞いた真剣勝負

貴乃花:ただ、体が小さかった。だから、きつかったんだなと、私なんかは、分かってしまうわけです。

板垣:お父さんは、中学時代、水泳選手としてもすごかったとか。

貴乃花:メキシコオリンピックのホープでした。それで、周囲の反対を押し切って角界入りをした――って言われていますけど、私が子供の頃に聞いた親父の本音は、水泳でオリンピックでメダルが取りたかった、角界には無理やり入れられた、と。

板垣:でも、それだけ身体能力がすごかったということですよね。だから、相当強かったはず。

貴乃花:親父は東京にいるときは、私と毎日風呂に入って、足の先から頭のてっぺんまで洗ってくれたんですよ。そのときに男同士の話だと言って、歴代、誰が真剣勝負だったかという話も全部、してくれたんですよ。

その親父がよく、私と2人っきりのときに、北の湖(第55代横綱)は強かったぞと、言っていました。

板垣:北の湖さんですか。あの体型で身体能力がすごかったと聞いています。

貴乃花:強さで言うと、近年で断トツじゃないですか。大鵬(第48代横綱)とやっても吹っ飛ばすぞと。それくらい強かったそうです。

板垣:そんなに! だって、大鵬さんって体が大きいでしょ。187センチ、約160キロですよね。

貴乃花:あの時代ではかなりの巨体ですし、大鵬さんも確かに強いんですよ。もともとの体型は細くて、努力の人でもあったから。

板垣:でも、北の湖さんのほうが強い?

貴乃花:そう。あと、北の湖さんは若くして上がってきた(史上最年少の21歳2か月で横綱昇進)から孤独だったぞと、親父は言っていましたね。

板垣:それは、貴乃花さんも同じじゃないですか。きっと、周りが面白くなかったはず。あんなにマスコミに注目されて、チヤホヤされているふうにも見えちゃう。

貴乃花:私は、そういう環境から逃げたくて、相撲部屋に入門したんですよ。

角界裏話で大盛り上がる、板垣恵介氏と貴乃花
角界裏話は大盛り上がり(写真/編集部)

――まだまだ話が尽きない真剣対談。次回、15歳で入門した当時を貴乃花が振り返る!

貴乃花光司(たかのはな・こうじ)
1972年8月12日、東京都生まれ。88年、藤島部屋に入門。92年の初場所で、史上最年少の19歳5か月で幕内初優勝。兄・若乃花と「若貴フィーバー」を巻き起こす。94年11月に第65代横綱に昇進。幕内優勝22回。生涯戦歴は794勝で、「平成の大横綱」と呼ばれた。2018年に日本相撲協会を退職し、現在はテレビ、講演会等、幅広く活躍中。

板垣恵介(いたがき・けいすけ)
1957年4月4日、北海道生まれ。20歳で陸上自衛隊に入隊。習志野第1空挺団に約5年間所属し、アマチュアボクシングで国体にも出場した。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で91年より連載中の人気格闘漫画『刃牙』シリーズは累計発行部数1億部を突破。現在、シリーズ第6部となる『刃牙らへん』を連載中。