■文句ナシの歴代最強ボクサーは井上尚弥
板垣:昨年のWBC世界バンタム級王座決定は見ましたか?
――WBC世界バンタム級2位の井上拓真が同級1位の那須川天心に3-0で判定勝ちし、世界王者に復帰した。
貴乃花:見ました。私は拓真派だったんですよ。だって、お兄ちゃん(スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥)がすごすぎるから。先生、今のボクシングで、お兄ちゃんはずば抜けていると思いませんか?
板垣:文句ナシの歴代最強。
貴乃花:環境からして違いますよね。お父さんはボクシング経験者で、トレーナーでもある。
板垣:尚弥が子供の頃、ボクシングをやりたいと言ったら、お父さんはまず防御を、しっかり教えたそうですよ。普通は、最初にサンドバッグを叩かせるじゃないですか。楽しいから。そこからしてもう考え方が違う。
――お二人は拓真対天心戦を、どう見ていましたか?
板垣:俺は井上拓真、よくやったぞと。那須川天心はいいお勉強になったよ。圧巻の試合だったけど、天心もよく倒されなかったなと。
貴乃花:天心のパンチも結構、当たっていましたよね。彼のようなサウスポーの選手って、パンチが入りやすいんですかね?
板垣:入ってましたね。でも、4ラウンドに採点をしたらドローだったから、あれで拓真は気分が乗って、逆に天心は下がった。
貴乃花:結局、天心もやっとこさでしたよね。元世界チャンピオンに勝てるかもしれないと思っていましたけど、そうはいかなかった。拓真さんからしたら、負けていたら立場がないですからね。
板垣:あそこまで勝敗によって差が出る試合はないですよね。タイトルを持っていかれるとかのレベルじゃなくて、天心に負けるのは引退を予感させましたから。
貴乃花:ただ、天心って性格がいいなと思ったんですよ。負けた後も清々しい。しっかり相手のことを敬うし。
先生はボクシングのナジーム・ハメド(ノーガードのままダンスを踊るようなステップで戦うスタイルで、1990年代後半のボクシング界を席巻したチャンピオン)って、ご存じですか?
板垣:もちろん。
貴乃花:天心が、そのハメドのマネをしていたんですよ。それを見て私は、君はハメドにはなれないんじゃないのかなと思って。
板垣:ハメドは逸材すぎましたからね。ステップもだし、ハードパンチャーで相手を倒せる選手だったし。
貴乃花:中東にルーツを持つんですよね。だから、足腰が柔らかいんですよ。あんな動きを見せられたら日本人は敵わないなと思います。
板垣:ですね。あそこまで自由な試合をしてる選手って、なかなか見られない。
――次回、真剣対談は最終回! 貴乃花が明かす喧嘩最強力士の名は!?
貴乃花光司(たかのはな・こうじ)
1972年8月12日、東京都生まれ。88年、藤島部屋に入門。92年の初場所で、史上最年少の19歳5か月で幕内初優勝。兄・若乃花と「若貴フィーバー」を巻き起こす。94年11月に第65代横綱に昇進。幕内優勝22回。生涯戦歴は794勝で、「平成の大横綱」と呼ばれた。2018年に日本相撲協会を退職し、現在はテレビ、講演会等、幅広く活躍中。
板垣恵介(いたがき・けいすけ)
1957年4月4日、北海道生まれ。20歳で陸上自衛隊に入隊。習志野第1空挺団に約5年間所属し、アマチュアボクシングで国体にも出場した。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で91年より連載中の人気格闘漫画『刃牙』シリーズは累計発行部数1億部を突破。現在、シリーズ第6部となる『刃牙らへん』を連載中。