「解凍するだけで、すぐ売れる」
そんな“冷凍すし”を武器に北米市場へ打って出ようというのは首都圏を中心に180店舗を展開する、持ち帰りすし大手の『ちよだ鮨』である。全国紙経済部記者が語る。
「北米にあるすしやラーメンなどの日本食レストランの数は約2万9400店と10年前に比べて17%ほど増えています。英調査会社のユーロモニターによれば、米国のテイクアウト市場は2024年に1294億ドル(約202兆円)に達しているとのこと。29年には24年比で24%増額する見通しです」
同社新規事業開発部の小野寺大樹氏は“冷凍すし”市場への参入の理由をこう語る。
「現在(26年2月9日時点)、国内で展開している180店舗中160店舗が中食(弁当などの調理済みの食材を買って持ち帰り、職場や家庭などで食べること)の形態です。以前に比べると競合相手も多いですし、食材の高騰も起きている。その中で新たな収入源が必要になっています。数多ある冷凍食品の中でも、すしの冷凍食品はそこまで流通していない。新規事業になり得ると考えました」(以下・小野寺氏)
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う形で20年頃から国内では『Uber Eats』や『出前館』に代表されるフードデリバリーサービスが躍進。それらに押し出される形でテイクアウト食品業界は売り上げの減少にも悩まされている。現に、25年6月に発表された『ちよだ鮨』の決算公告でも2.8億円の純損失が計上されている。国内市場だけで勝負を続けるのは持ち帰りすし大手の『ちよだ鮨』でも難しいということだろう。冷凍すし市場へ参入するにあたり『ちよだ鮨』は他社との差別化に力を入れてきたという。
「今までの冷凍すしは少し水を加えてレンジで温めるなどの工夫が求められた。冷凍食品なのに取り扱いが難しい商品でした。我々としてはそういった手間がかからない商品を開発したということです」
米国で販売する商品はスーパーで解凍した後に、チルド商品として販売するという。これならば購入直後に消費者は食べられるし、手間いらずだ。『ちよだ鮨』が“冷凍すし”の販売を行う地域は米国だけに限らない。
「シンガポールでも販売しないかとお声掛けをいただいています。富裕層がいる地域ほど販売を求める声は多いです。EU圏からも販売を求める声は届いていますが、食品添加物の問題から乗り越えないといけないハードルもあります」
日本国内では握りずし1人前が1000円以内で購入でき、比較的リーズナブルな印象が強い『ちよだ鮨』。一方、米国で『ちよだ鮨』が販売する“冷凍すし”の価格は『にぎりすし8貫』で20ドル弱(約3100円)、『ロールずし』は10~12ドル(約1600~1900円)だという。現地のスーパーで販売されているロールずしはおおむね16~18ドル(約2500~2800円)だから、相場よりは安価だが、日常使いするには少々値が張る印象だ。