■特別対談5:『刃牙』作者・板垣恵介 × 貴乃花、最強ボクサーを語る「マイク・タイソンはすごかった」「井上尚弥は文句ナシの歴代最強」

貴乃花:頭と頭で当たる競技って、世界広しと言えど大相撲しかないでしょう。現役バリバリの力士なら普通に殴られる程度じゃ、全然効かない。

板垣恵介氏(以下=板垣):俺も、そう思う。殴られる覚悟をした力士は倒せない。

貴乃花:力士は、頭が当たる瞬間に、自然に顎を引くクセがついているんです。首にガッと力が入っているので、ボクシングのように顎を打つパンチもダメ。

板垣:それに、頭で受けられたら手の骨が折れる。頭蓋骨の生え際が人体で最も硬いらしくて、だからUFCが素手だった時代は、みんな骨折してる。人間の頭って、ゴムで包んだ石みたいなもんだから。

貴乃花:ただ、ボクサーだとマイク・タイソンはすごかったですよね。体の軸が太くて、自動回転をするようにパンチを繰り出していた。

板垣:まさに、そんなパンチでした。身長約180センチで、動きがまるで軽量級のように速かった。

貴乃花:ボクシングでは、タイソンが間違いなく歴代ナンバー1だと思いますよ。女性問題がいろいろとあったし、1990年の東京ドーム戦では、まさかの敗北を喫しましたけど。

板垣:相撲は、どうですか。禁欲はしますか?

貴乃花:します。勝負のときは、その日の15日前から絶対にダメですね。医学的には1週間に1回はやったほうがいいという意見もありますけど、私は、そんなことはないと思います。絶対ダメ。気がほぐれたら勝負には勝てませんよ。

板垣:モハメド・アリは影響がないと、はっきり口にしているんですよ。でも、試合前に2度、禁欲を破っちゃった。その2試合は負けてるんです。

貴乃花:男は出すだけですから。出したら脳汁が失われるので勝負事にはよくない。

文句ナシの歴代最強ボクサーは井上尚弥

板垣:昨年のWBC世界バンタム級王座決定は見ましたか?

――WBC世界バンタム級2位の井上拓真が同級1位の那須川天心に3-0で判定勝ちし、世界王者に復帰した。

貴乃花:見ました。私は拓真派だったんですよ。だって、お兄ちゃん(スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥)がすごすぎるから。先生、今のボクシングで、お兄ちゃんはずば抜けていると思いませんか?

板垣:文句ナシの歴代最強。

貴乃花:環境からして違いますよね。お父さんはボクシング経験者で、トレーナーでもある。

板垣:尚弥が子供の頃、ボクシングをやりたいと言ったら、お父さんはまず防御を、しっかり教えたそうですよ。普通は、最初にサンドバッグを叩かせるじゃないですか。楽しいから。そこからしてもう考え方が違う。

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■特別対談6:『刃牙』作者・板垣恵介 × 貴乃花が挙げる最強の格闘家「柔道の山下泰裕さんはプーチンさんと直電できるらしい」「琴錦さんは半グレを返り討ちにした」

――前回は最強のボクサーについて、トークが盛り上がりましたが、他の競技で強いなと思う人とは?

貴乃花:柔道金メダリストの山下泰裕さん。うちの親父は山下さんが力士になっていたら、間違いなく横綱になっていたと言っていました。だって、山下さんがバリバリのときの柔道を見たら、相手が投げに来たらポンと潰して終わりでしょ。太刀打ちできないとは、このことかと。

板垣恵介氏(以下=板垣):体重130キロの選手を押さえ込んでましたよね。山下さんは120キロぐらいだから、明らかに一回り以上大きい相手なんだけど、山下さんが上に乗るだけで返せない。なぜかと聞いたら、押さえるところを押さえているんだと。山下さんは、それができるんだと。

貴乃花:力士もそうなんですけど、実力が上に行くほど、腰がしっかり重いんですよ。体重は関係ないんです。

板垣:だから、投げられない。

貴乃花:そうです。柔道の場合は反動を利用して投げたりとかするから、押してから引いて投げたりしますけど、相撲の場合は引いたらダメ。そこは明らかに違いますけどね。

板垣:柔道の言葉で、「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」というのがあるけど(※全戦無敗、史上最強の柔道家と言われる木村政彦を指す言葉)、山下さんが出てきて変わったといいます。「木村の前に木村なく、木村の後に山下あり」と。

貴乃花:ちなみに、ロシアのプーチン大統領は親日家で、柔道をやっているのはご存じですか?

板垣:講道館にも来たんですよね。そこで、全日本柔道連盟の会長だった山下さんと乱取りをした。それで講道館六段の帯をもらったんだけど、そのときにプーチンは、「私は、柔道をやり込んだ人間だから六段の実力が、どれほどのものか知っている。だから、この帯の力に少しでも近づくために努力を続ける」と、そんなステキなことを言った。

貴乃花:日本人で、プーチンさんと直接電話でやりとりできるのは山下さんだけらしいですよ。

板垣:本当に? それは、すごい。接待柔道が効いたんだな(笑)。

半グレを返り討ちに引退後も"最強関脇"

――角界に話を戻すと、元大関・魁皇は握力が測定不能だったという都市伝説もありますが、怪力も強さの要因になり得ますか?

貴乃花:いえ。相撲は足の裏から頭のてっぺんまでを使わないといけないから、単に腕の力が強いだけではダメです。けど、魁皇さんは確かに強かったですね。あと、うちの親父が強かったと言っていたのは、北の湖さん(第55代横綱)と輪島さん(第54代横綱)。

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貴乃花光司(たかのはな・こうじ)
1972年8月12日、東京都生まれ。88年、藤島部屋に入門。92年の初場所で、史上最年少の19歳5か月で幕内初優勝。兄・若乃花と「若貴フィーバー」を巻き起こす。94年11月に第65代横綱に昇進。幕内優勝22回。生涯戦歴は794勝で、「平成の大横綱」と呼ばれた。2018年に日本相撲協会を退職し、現在はテレビ、講演会等、幅広く活躍中。

板垣恵介(いたがき・けいすけ)
1957年4月4日、北海道生まれ。20歳で陸上自衛隊に入隊。習志野第1空挺団に約5年間所属し、アマチュアボクシングで国体にも出場した。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で91年より連載中の人気格闘漫画『刃牙』シリーズは累計発行部数1億部を突破。現在、シリーズ第6部となる『刃牙らへん』を連載中。