東京のマンション相場の上昇が止まらない。国内最大級の不動産データバンク、東京カンテイが2月19日に発表した東京23区の中古マンション価格(70平米当たり)が前年同月比34.4%増となる1億2132万円となり、1億2000万円の大台を突破した。都内のマンション価格急騰が続く中、ここでは新築マンションの購入へと踏み切ったある夫婦のケースを見ていきます。
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製薬会社に勤める岩井淳夫さん(32歳・仮名)は都内のマンションのモデルルームで、大手デベロッパーの営業担当者を前に一世一代の決断を下そうとしていました。
営業職として活躍する岩井さんの月収は約65万円。月に残業も50時間ほどあることから高額の給料を得ています。事実、30代前半にしてボーナスを含めた年収は1000万円を超えるというのですから、世間一般で言うところの“エリートサラリーマン”に違いありません。
1つ年下の妻・麻美子さん(31歳・仮名)も上場企業の子会社で勤務し年収は600万円ほど。2年前に産まれた1人娘もまだ幼いことから、塾代などの教育費も現段階では不要です。淳夫さんが独身時代から節約して貯めた貯金も1500万円ほどあることから、夫妻は都内の新築マンション購入に踏み切ろうと決意したのです。
毎月のように最高価格を更新し続ける都内のマンション相場ですが、世帯年収1600万円の自分なら余裕で購入可能だとたかをくくっていた淳夫さん。しかし、埼玉県にほど近い、城北エリアに建築予定のタワーマンションのモデルルームを訪れるとその考えは一瞬で覆されます。モデルルームで営業担当者から提示された金額は70平米に満たない3LDKで1億5000万円台。その後、営業担当の口から淳夫さんへと向けて発せられたのは驚くべきひと言だったのです。
「岩井さんの場合はまだ、お若いですから35年ローン以外でも組めますからね」
住宅ローンは35年だとばかり思っていた淳夫さん。この後、担当者から提示された条件は、驚きの返済期間45年。しかも、契約するなら妻である麻美子さんとのペアローンという条件付きでした。年0.59%ほどの金利で済む単身ローンとは違い、変動金利を利用しても年0.64%ほどの金利が借入金に対してかかるペアローン。
男ならば一馬力で住宅ローンは組むものだとばかり考えていた淳夫さん。都内のタワマンを1人で購入することは不可能という現実を突きつけられたことで、一度は新築マンションの購入を見送ろうとも考えましたが、妻の「ペアローンでも良いから新築マンションを!」のひと言を受け購入へと踏み切りました。無事、抽選にも当選し、夢の新築タワマンの購入に成功した岩井夫妻。
当初予定していた35年ローンだと夫妻の月々の支払額はおよそ38万円でした。一方、45年ローンを選択したことで夫妻の月々のローン支払額は約31万円にまでダウンします。
昨今の人件費高騰や資材費高騰の影響から高騰気味の修繕積立金や管理費、計6万円を合わせても月の支払いは37万円ほど。世帯年収1600万円、妻の手取りは約28万円ほどでと自身の手取り約50万円を足すと夫妻の月の手取りは78万円です。
これだけの稼ぎがある自分たちなら「余裕でローンを支払える」と明るい未来を思い描いた淳夫さん。しかし、実際に新築マンションへと引っ越し、ローンの支払いが始まるとそこには思わぬ落とし穴が待ち受けていたのです。当時のことを「こんなはずではなかったんですが……」と頭を抱えて振り返る淳夫さん。
エリートサラリーマンとして同世代よりも高い収入を稼ぎ出していた淳夫さんの身に何が起きたのか――。