定年から4年間、継続雇用として働いてきた上杉泰平さん(72・仮名)が都内の年金事務所を訪れたのは7年前のことだという。このとき上杉さんは相談員にこう声をかけられたそうだ。
「年金、受け取りますか? 3年間受け取りを後ろ倒しにすれば毎月の受取額が25.2%、5年間受給を繰下げるだけで上杉さんが受け取れる年金は42%もアップします」
この提案を“お得だ”と感じた上杉さんはすかさず繰下げ受給を決意する。しかし、72歳となった現在、そのときの決断は誤りだったと上杉さんは強く感じているそうだ。年金の受給額が増加する繰下げ受給制度。今回は制度に潜む落とし穴をお金の専門家と共に検証する。
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年金の繰下げ受給を決断したときの心境を上杉さんはこう振り返る。
「仕事を辞めた直後の65歳なんて元気一杯。ついこの間まで会社で20代や30代の若手社員と仕事をしていたわけで、3年なんてあっという間。2000万円の退職金も受け取っていますし、生活費の心配はしていませんでした」
上杉さんは68歳までの3年間大病を患うこともなく無事に過ごす。このときのことを上杉さんはこう振り返る。
「余裕だなと思いました。生活費にも困ってないですし、年金の支給をもっと遅らせようと思いました」