■年金の繰上げ受給と繰下げ受給のメリットとデメリットを【CFPが解説】

──年金の繰上げ受給をするメリットとデメリットはありますか。

 繰上げ受給の最大のメリットは、「早期に安定収入を確保できる」点です。60歳から65歳までの空白期間に対して、生活資金の一部を補うことができるため、退職直後の生活資金に不安がある場合には有効な選択肢となります。また、短命の場合には総受給額で有利になる可能性もあります。

 一方で最大のデメリットは、「減額が一生続く」点です。繰上げ受給では1か月あたり0.4%ずつ年金額が減少し、最大で24%の減額となります。 この減額は終身にわたり適用されるため、長生きするほど不利となる構造です。実際、60歳開始の場合、80歳前後で65歳受給と比較して不利に転じるとされています。

 したがって、繰上げは「資産が不足している場合」や「健康リスクが高い場合」には合理的な選択となりますが、安易に選択すると老後後半の資金不足を招く可能性があるため、慎重な検討が必要です。

──年金の繰下げ受給をするメリットとデメリットはありますか。教えてください。

 繰下げ受給の最大のメリットは、「終身で受け取る年金額が増えること」です。年金は1か月繰下げるごとに0.7%増額され、70歳まで繰下げると約42%増となります。

 この増額は一生続くため、長生きするほど有利であり、長寿リスクへの備えとして有効です。また、受給額が増えることで、物価上昇に対する耐性も相対的に高まります。

 一方でデメリットとして大きいのが、「受給開始までの空白期間」です。この期間は年金収入がないため、生活費を貯蓄や退職金で賄う必要があります。また、損益分岐点が80代前半にあるため、それ以前に死亡した場合は総受給額で不利になります。

 したがって、繰下げ受給は「十分な資産があり、長生きが見込まれる方」に適した選択であり、単に増額率の高さだけで判断するのではなく、全体の資金計画の中で位置づけることが不可欠です。

【記事前編】では年金受給を開始する上で適切となるタイミングの見極め方をCFP・宮岡秀峰氏が解説する。

※税理士法人アクシア代表社員で、公認会計士・税理士、CFP資格を持つ宮岡秀峰氏

宮岡秀峰(みやおか・しゅうほう)
公認会計士、税理士、行政書士、CFP資格(日本やアメリカなど世界各国・地域で認定されている国際的なファイナンシャル・プランナーの最上位資格)。税理士法人アクシア代表社員、アクシア公認会計士事務所代表。公認会計士として会計・財務の視点から中小企業支援に取り組むほか、相続・事業承継分野にも幅広く携わる。講演や税務相談の実績も豊富で、会計・税務分野の書籍共著、雑誌寄稿も行なっている。

税理士法人アクシア 公式HP:https://axia.or.jp/