■一度経験した不安には不思議と免疫ができる

 かつて青春時代に、そういうパニック騒動を2度ほど体験してるもんで、今回のナフサ騒ぎもあんまり不安にならない。つまり「この不安はどこかで味わったことがあるな」って自分を振り返って冷静な視点で見ると、不安になることもないんですね。

 意外と私たちって一度体験した不安に関しては免疫力を持ってるんです。小学校のときの予防注射って怖かったもんね。それが今はなんだかんだで、人間ドックのたびに血を抜かれてるわけだから。注射の不安に対する免疫ができているわけですね。

 大事なことは、たえず物事を考えるときに“今の状況にフォーカスしすぎて切迫しない”こと。ナフサ不足もそうですが、過去の自分の体験と冷静に比較してみるだけで、不安はだいぶ解消されるんじゃないでしょうか。

 これ言っちゃなんだけど、世の中には人を不安がらせてしまう人がいますよね。ニュースやワイドショーのコメンテーターでも、やたらと不安になるようなこと言ったりしてね。不機嫌そうな顔して「これは日本人、もっともっと考えなければなりませんね」とか。重々しい口調で言う人がいるけど、考えたくないから番組を見てるんだよ。「そんなに物知りなんだったら、もっと明るいことを語れよ」って言いたくなるときある。

 そういうコメントに身を任せちゃうと余計に不安になるばかり。必ず自分というものを軸にして自分のメジャーで、自分の升で、不安の大きさを計ること。これが大事なんじゃないのかな。

 私の青春時代を振り返れば、石油危機で何が一番困ったかというと、「石油由来の塩化ビニールがなくなる」ということ。塩化ビニールってレコード盤の素材なんですよ。今でも覚えてるけど、ちょうどそのときヒット曲が出たの。それが『母に捧げるバラード』。

 大手のレコード会社に所属してれば、それほどの一大事じゃなかったんだろうけど、私たち海援隊はいわゆるマイナーなレコード会社にいたもんだから、塩化ビニールを確保する力がないんですよ。そのせいで実際にレコード制作に影響が出まして、売上にも多少影響しました。

 でも考えてみたら、そこを乗り越えてきてるんですよ。

 だからご同輩、くれぐれも今ある不安を他人任せにしちゃいけませんよ。あくまでも自分を軸にして判断する。今ある不安に対して過去の自分と比較して、「あのとき、あんな不安な思いをした。でもお前はここまで来たじゃないか」という人生のチェックの仕方をしましょう。世間に流されても不安が広がるだけですよ。自分軸で考えて、

「こんな不安や心配なんて大したことない」

 そう思えるようになりたいですね。

「考えない」ように考えましょう。

考えてはいけないことリスト
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仕事の合間に、帰り道に、夜布団に入ってから  頭の中では絶えず「内なる声」が話し続けている。現代人の止まらない脳内の思考をどう止めるか。「考えなくていいことを考えすぎ」な自分を救うための、思考の取捨選択を提案する一冊。著・堀田秀吾、フォレスト出版

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武田鉄矢(たけだ・てつや)
1949年生まれ、福岡県出身。72年、フォークグループ『海援隊』でデビュー。翌年『母に捧げるバラード』が大ヒット。日本レコード大賞企画賞受賞。ドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)など出演作多数。