■天岩戸開き伝説と皆既日食の関係は

 ちなみに、天岩戸開きを、天文学と結びつけて考証している学者もいます。

「日の神の天の磐戸にこもりたまひしといふハ、日食の事なり」

 太陽神(アマテラス)が天岩戸にお隠れになったという話は、実は、日食のことを表しているのだ──。こう指摘したのは、江戸時代の儒学者・荻生徂徠(おぎゅう・そらい)です。

 稲作によって暮らしていた古代人にとって、太陽が欠け、昼間に突然暗くなる皆既日食は、想像を絶する出来事だったはず。その畏怖の念が、神話という形で語り継がれたのではないかと、考えたわけです。

 古代の日本で起きた日食の予測はいくつかありますが、中でも興味深いのが、247年説と248年説です。邪馬台国の女王・卑弥呼が亡くなり、その後継者である台与(とよ)が誕生した時期に、二度の日食が起きていたとされています。

 当時の人々にとっては、世の中を揺るがす大事件だったでしょう。後の時代、それが神話に取り込まれ、天岩戸開きとして語り継がれたとしても、なんら不思議ではありませんよね。

 私の連載では以前、アマテラス=卑弥呼説も取り上げました。世界の太陽神の多くが男神であるのに、日本では女神として伝えられています。《【以前の記事】はこちらから》

 それは、皆に親しまれた巫女(卑弥呼)が亡くなったとき、太陽神と習合したからだという説でしたが、今回のお話と、なんらかのつながりを感じませんか?

 真相はさておき、日本神話のロマンに思いをはせながら、天岩戸神社を訪れてみてはいかがでしょうか。

貴乃花光司(たかのはな・こうじ)
1972年8月12日、東京都生まれ。88年、藤島部屋に入門。92年の初場所で、史上最年少の19歳5か月で幕内初優勝。兄・若乃花と「若貴フィーバー」を巻き起こす。94年11月に第65代横綱に昇進。幕内優勝22回。生涯戦歴は794勝で、「平成の大横綱」と呼ばれた。2018年に日本相撲協会を退職し、現在はテレビ、講演会等、幅広く活躍中。