■ラーメンとペアリングする店舗も現れて…
問題点も指摘される予約制のラーメン店。このシステムを取り入れるラーメン店にはいくつかの特徴があるという。藤野氏が話す。
「多くの店は、まず並べば食べられる店としてスタートし、行列が常態化すると、記帳制や整理券制などを導入して混雑を緩和します。その先の選択肢として、予約システムの導入を検討するケースが一般的に多いように感じます。
また、予約制を採用する店舗は、比較的客単価が高い傾向にあります。通常メニューに加えて、日替わりや限定で上質な食材を使った一杯を提供したり、サイドメニューを充実させたり、ビールやワインなどのアルコールを提供したりと、従来のラーメンと比べてを“食事+α”として楽しんでもらう工夫が見られます。
一方、お客様にとってもメリットとして、長時間並ぶ必要がなくなるだけではなく、予約した時間に来店し、30分ほどの食事時間をゆったりと楽しむことができます。行列店で感じがちな“早く食べなければ”というプレッシャーから解放され、自分のペースで一杯と向き合えることも、予約制ならではの価値といえるでしょう。」
代表例として挙げられるのが、新宿御苑に店を構える『RAMEN MATSUI』だ。2025年3月、日本で開催されたロサンゼルス・ドジャースの開幕戦の際には、大谷翔平(32)の同僚であるアレックス・ベシアが足を運んだことでも話題となった。
同店の魅力は、一杯のラーメンを味わうだけでない。ソムリエ資格を取得した女将さんが、来店客に「ラーメンに合わせたワイン」の体験を提供。厳選した食材を使った限定メニューや、料理に合わせたアルコールのペアリングなど、ラーメンの枠を超えた時間を提供している。
「ラーメン一杯で2000円前後。そこにワインなどのアルコールやサイドメニューを合わせれば、客単価はさらに高くなります。驚かれるかもしれませんが、今のラーメン業界では、一杯の価格だけでなく、滞在時間や空間、そこで提供されるラーメンのコース料理など、スローダイニング化を楽しむ高価格帯の店も増えているんです」(同)
ラーメンといえば「1000円の壁」とよく言われたものだが、そんな壁をふっとばす勢いの価格帯。藤野氏は、「ラーメン店の三極化」を指摘する。
「そもそもラーメンは、日本人にとってのソウルフードであり、国民食です。そのため、“一杯800円〜1000円程度が適正価格”と考える人は今でも少なくありません。一方で、原材料費や人件費、光熱費の高騰に加え、ラーメンに求められる価値そのものも多様化しています。
現在のラーメン業界は、大きく三つの価格帯へと分かれつつあると感じています。一つは、チェーン店を中心とした1000円前後の日常使いのラーメン。二つ目は、有名店や人気店が特製トッピングなどを加え、1500~2000円前後で提供するプレミアムな一杯。そして三つ目が、予約料も含めて2000円を超えるラグジュアリー店です。
この価格帯では、厳選した食材や手間をかけたスープだけでなく、空間やサービス、ラーメンのコースやアルコールなどを含めた“味+体験”を提供しています。単にラーメン一杯の値段が上がったのではなく、お客様が求める価値に応じて、ラーメンそのものが三極化してきているのだと思います」
予約システムの普及は、単なる混雑対策ではなく、ラーメン店での体験価値そのものを変えつつある。これからは「並んで食べる一杯」と「予約して味わう一杯」が共存し、価格や体験価値に応じて客が店を選ぶ時代へと進んでいきそうだ。
藤野弘行(ふじの・ひろゆき)
1978年生まれ。日本のラーメン文化を世界へ発信し、訪日外国人向けに特化したラーメンの講座作り、コンシェルジュ、店舗アテンドまでを手がける、日本唯一のインバウンドラーメンコンサルタント。麺文化の深化と発展を担う全国コミュニティ【「東京/大阪/東北】麺会プロジェクト代表。マツコの知らない世界(TBS系)にラーメン専門家として二度出演のほか、テレビ番組の監修・出演、執筆活動など、多方面で活動。