■夏場のサウナは脱水に要注意!

 ただし、サウナに入れば熱中症にならない、という意味ではない。サウナはあくまで熱順化を促す手段の一つであり、水分補給や塩分補給、エアコンの使用といった基本対策に取って代わるものではない。

 むしろ夏場のサウナには、見逃せないリスクもある。最大の注意点は脱水だ。

「暑い時期は、すでに汗をかいて水分が失われた状態でサウナに入ることも多い。そこからさらに発汗すると、脱水が進みやすくなります。目安としては、500mlから1リットル程度の水分をしっかり補う必要がありますね」

 水だけでなく、塩分や電解質の補給も重要だ。特に熱順化が始まったばかりの段階では、汗と一緒に電解質が失われやすい。日中に大量の汗をかいた日は、スポーツドリンクや塩分補給食品などを活用してから入るほうが安全だという。

 さらに危険なのが、飲酒後のサウナだ。

「アルコールを飲んだ状態でのサウナは、明確に避けるべきです。飲酒後は脱水も進みやすく、循環器への負担も高まります」

 仕事帰りに一杯飲んでからサウナへ──。サウナ好きには魅力的な流れに思えるかもしれないが、夏場にはかなり危ない。心臓や循環器系の病気がある人、薬を服用している人、基礎疾患がある人は、主治医に相談してから利用すべきだという。

「サウナの効果や負担の感じ方には個人差があります。特に年齢を重ねると、若い頃のように長時間入ることが、かえって体への負担になる場合もあります」

 では、無理なく熱順化を進めるには、どのようにサウナを使えばいいのか。加藤氏は「追い込みすぎないこと」が大切だと話す。

「頻度としては、週1回から、多くても週3〜4回程度が目安です。毎回きつく追い込む必要はありません。むしろ、過剰な熱負荷は自律神経の働きを弱めてしまうことがあります。40代、50代以降になると、翌日まで自律神経の状態が落ちたままになる場合もあるので注意が必要ですよ」

 3セット入る場合でも、サウナ室にいる時間は合計15〜20分ほど。1セットあたりでは7分に満たないくらいの軽めの入り方が目安だという。長く我慢すればするほど体が鍛えられる、という発想はむしろ危険なのだ。

 水風呂も、冷たければ冷たいほどいいわけではない。

「極端に冷たい水風呂は交感神経を強く刺激し、血圧や心拍数を上げやすくする。リラックスのつもりが、かえって体にストレスをかけてしまうこともあります」

 だからこそ、夏場のサウナは“入り方”が重要になる。最後に加藤氏はこうアドバイスをしてくれた。

「大切なのは、暑さに慣れようとして無理に我慢することではなく、自分の体質や体調に合わせて負荷を最適化することです。外気浴やクールダウンを十分に取りながら、過剰な負荷にならない範囲で定期的に入る。それが、夏場のサウナ利用では最も現実的で安全な方法だと思います」

 頑張りすぎないサウナ習慣が、今年の猛暑を乗り切る武器になるかもしれない。

加藤容崇(かとう・やすたか)
慶應義塾大学医学部特任助教・日本サウナ学会代表理事。北海道大学医学部医学科を経て、同大学院(病理学分野専攻)で医学博士号取得(テーマは脳腫瘍)。人間が健康で幸せに生きるためには、健康習慣による「予防」が最高の手段だと言うことに気づき、サウナをはじめとする世界中の健康習慣を最新の科学で解析することを第二の専門としている。サウナを科学し発信していく団体「日本サウナ学会」を友人医師、サウナ仲間と作り、代表理事として活動中。著書に「医者が教えるサウナの教科書」、「医者が教える 究極にととのう サウナ大全」(ともにダイヤモンド社)がある。