■他人を許すことは武道でいう受け身
さて、今回のテーマの締めとして、加齢とともにオススメしたい技があります。
その技とは何かというと「許す」という技。年を取るにつれて、「許す」という技を磨かなければなりません。
『考えてはいけないことリスト』には、こうあります。
「許せない」と思い続けることは、相手ではなく自分を傷つけ続けること(同)
「許す」とは何かというと、武道でいう“受け身”なんですよね。相手に勝つ技じゃない。自分の身を守るために上手に負ける。これが受け身なんだ。
この受け身というのは、心身ともにケガをしないための大事な技術。慢性的な怒りや恨みというのは、心臓や血管にものすごく重大な負荷となります。つまり、心身へのリスクとなる。これを解く技、上手に衝撃を和らげる技が「許す」こと。
多少、腹が立ったとしても許しましょう。別に大したことではないですよ。
若けぇヤツが道端にポンとゴミを捨てたりするのを見かけても、腹を立てず黙って拾ってあげましょうや。
だって考えてみれば、こっちも、さんざん道を汚した若者でしたから。昭和生まれの俺たちは、火のついたタバコを道端に投げ捨てて、そいつを、つま先でもみ消すっていうのが男のポーズだったもの。
今の時代に、そんなことやったら犯罪で捕まりそうだけど、昭和の頃、あれは“ダンディの証”でしたよね。
だから許しましょう。若い連中が多少の悪さをしたところで、こっちだって若いときには悪さしてるってもんですよ。
柔らかく世の中を見ましょうや。
ところで、さっき“受け身”と言いましたが、年配の方が受け身を覚えるのにピッタリのスポーツがあります。それが“大相撲”。
テレビ中継を見ても、相撲を観戦してるのはお年寄りが多いでしょ? これは武田説ですが、大相撲って、高齢者のための生きていく術を磨く教本としては抜群なんですね。
今ものすごく人気のある「宇良」という力士がいます。
一見、のどかな、クマのプーさんみたいな顔してるんだけど、何がいいかって、負けっぷりがいいのよ。相手からバーンと投げられると、見事に一回転して土俵の下に転がり落ちる。それでいて、わりとケロッとした顔して土俵に上がってきて、一礼して去っていく。
この負けっぷりがいいんだ。
これが何を教えているかというと、受け身が上手ってことを。
自分の体をきれいに丸めて見事に飛ぶんだよね。大相撲というのは、この負けっぷりという受け身を学ぶにはもってこいのスポーツなんだな。
皆さんも「許す」という受け身技を覚えることで、世の中の衝撃を柔らかく受け止めましょうよ。
とにかく、力まないこと。
それが、残りの人生を悔いなく生きていく秘訣ですよ。
強さとは柔らかなこと。
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武田鉄矢(たけだ・てつや)
1949年生まれ、福岡県出身。72年、フォークグループ『海援隊』でデビュー。翌年『母に捧げるバラード』が大ヒット。日本レコード大賞企画賞受賞。ドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)など出演作多数。