武田鉄矢が、心を動かされた一冊を取り上げ、“武田流解釈”をふんだんに交えながら書籍から得た知見や感動を語り下ろす。まるで魚を三枚におろすように、本質を丁寧にさばいていく。

  今回も穂村弘さんという歌人が選んだ現代短歌を集めた短歌集『短歌ガチャポン、もう一回』(小学館)を題材に、魅惑の短歌の世界をじっくり味わっていこうと思います。

 さっそくご紹介しましょう。いきますよ!

 世界のニュースを目にするたびに胸をかすめる思い。そういう短歌が見つかりました。

 

人と人戦はさずに神と神
戦ふべきなり神ありとせば
(丹羽利一)

 

 日本は神様が実に静かな国です。八百万の神が日本中の至るところにいらっしゃって、私たち日本人は自然と調和しながら暮らしている。しかし、世界には「戦をしなさい」と人間に命じる神がいる。

 現在、世界各地で起きている地域紛争の背景には、神がいる。人間に戒律や命令を与える神様が。でも、神様の考え方の違いで人間が争うのは変な話ですよね。

 

  無力な人間が神に向かって投げかけ得るぎりぎりの言葉かもしれない。(中略)人間とは神の代わりに生きているのか。だから、すべてのことをするのだろうか(穂村弘. 『短歌のガチャポン、もう一回』. 小学館, 2025)

 

 選者の穂村さんはそう述べておられますが、この歌の作者は、人と人を戦わせるような異国の神々のことを叱りたくなったんでしょうね。

「あなたが神様だったら、人間と人間を戦わせないで、あなたが向こうの神様と直接戦いなさいよ」と神様に訴えかけているように感じられます。

 本当にときどき言いたくなるときありますよねぇ。

 どっかで戦争が起こるとガソリンが高くなったりしてね。電気代は上がるし、物の値段は上がるし。いい迷惑ですよ、こっちは。

 こんな風に、神様への注文も歌にできるというのが短歌の面白さでもあります。