■20年育てて100万円に
ただし、盆栽が値上がりする現象は絵空事ではない。三浦氏自身、若い頃に買った盆栽が思わぬ“出世”を遂げた経験を持つ。
「23~24歳の頃、職人修業中に小遣いで5万円の盆栽を買ったんです。すると知り合いの愛好家から譲ってほしいと言われて、それを10万円ほどで売りました。この時点で倍になっているわけです。それから、その盆栽がどうなったか知らなかったんですが……」
なんと後年、その盆栽が市場に再登場。つけられた値段は5万円の20倍となる100万円だったという。投じた資金が20倍! かつての小豆相場も顔負けの“爆騰”ではないか。
「とはいえ、100万円の価値になるまでには20年ぐらいかかっていますからね。その間、持ち主がきちんと手入れをして、盆栽としての価値を高めたからこその値段なんです。買った翌週に5万円が100万円になるような話ではない。中には1万円で買った盆栽が3万円、5万円になるケースもありますが、株や仮想通貨の投資とは根本的に違いますよ」
さらに考えなくてはいけないのが売却方法。高く評価される1鉢に育っても、買い手がいなければ現金化できない。盆栽業界には業者向けオークションがあるが、これも一般人が参加することは難しい。
「売りたい場合は盆栽業者に相談して委託する方法があります。あとはメルカリやヤフオクなどに自分で出品する人もいますね。ただ、そもそも盆栽のことを何も知らない人が簡単にお金儲けできるほど甘い世界ではない。その点は肝に銘じておいたほうがいいでしょう」
聞けば聞くほど奥が深い盆栽の世界。残念ながら簡単に老後の副業とはいかないらしい。それでも海外では亡くなったフランスの俳優、アラン・ドロン氏やアメリカのハードロックバンド、モトリー・クルーのトミー・リー氏などが“盆栽沼”にドハマリ。その影響もあって、盆栽の裾野は確実に広がっている。
「昔は年寄り臭い趣味だと敬遠されがちでしたが、今は海外での高い評価が日本に逆輸入されている部分がありますからね。本音を言えば、もっともっと若い人たちに気軽に楽しんでほしい。それと同時に古くから存在する盆栽文化を大切に守り、次世代へ伝えていくことも大切だと思っています」
すぐに札束にはならなくとも、手をかけた盆栽は育てる楽しみを返してくれる。とりあえず一生ものの趣味として、ベランダの小さな1鉢から始めてみるのも悪くなさそうだ。
三浦裕貴(みうら・ひろき)
日本小品盆栽協同組合・理事長。全日本小品盆栽協会・認定講師。NHK文化センター講師(梅田・神戸教室)。『三浦培樹園』2代目園主。1974年、大阪府生まれ。国風展や大観展、雅風展などの展示会で、内閣総理大臣賞を含む多数の大臣賞をプロデュース。大阪・関西万博では、EXPO2025日本盆栽・水石展の実行委員長に就任。万博期間中の迎賓館で盆栽を展示し、盆栽の魅力を伝える。また、イタリアを中心にヨーロッパでのイベントに多数参加。盆栽文化を世界に広めるために普及・啓発活動に従事する。